ファイナンス 2022年11月号 No.684
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FOREIGNWATCHER *1) 本エッセーの作成にあたっては、在アフリカの日本大使館や日本企業の知人、アフリカ開発銀行の日本人職員の同僚(特にアジア事務所の花尻所長)、世界銀行時代の同僚のほか、東京大学の鈴木綾教授に助言や協力をいただいた。この点、御礼申し上げたい。一方、本文中の意見、感想等はすべて筆者の個人的な意見であり、誤りがある場合も筆者個人に責任があることを明記しておきたい。*2) ちなみに、日本もMDBsの一つである世界銀行から1953年から1966年にかけて貸し付けを受けていた。例えば、東海道新幹線の建設のために当時の国鉄が、「クロヨン」の名称で有名な黒部川第四発電所の建設のために関西電力が長期資金を借り入れている。一般に、国の発展の初期段階においては、インフラ整備等に膨大な資金が必要である一方、そうした国の政府や民間企業が合理的な条件で市場から資金を調達する力は限られている。こうした状況において、開発事業を行う者に対し、長期かつ合理的な金利で貸付けを行うことにより国の発展を支援するのが開発銀行の基本的な役割の一つである。なお、現在は、国の発展における制度の重要性がよく認識されるようになり、インフラ整備だけでなく、制度改革などを支援するための貸付けなども行われるようになっている。前述の日本への貸付けについては、「日本が世界銀行から貸出を受けた31のプロジェクト」として、下記の世界銀行のホームページによくまとまっているので、参考にされたい。 https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/31-projects-shinkansenビジネスに向かない?アフリカ開発銀行 日本等代表理事 野元 隆章*1このエッセーで伝えたいことは「アフリカには多くのチャンスがあるので、是非、アフリカに来て欲しい」ということである。私自身は、昨年7月より、アフリカ開発銀行に日本等を代表する理事として赴任し、その本部があるコートジボワールという西アフリカの国に住んでいる。私自身、アフリカについて学んでいる最中であり、アフリカの将来や状況について断定的な意見を述べることは自分の能力を超えている。しかしながら、それでもなお、前述の通り、アフリカには多くのチャンスがあると感じているし、アフリカは、今後、世界の成長センターとしての役割を果たしていくだろうと思う。このエッセーは、私が、この1年余りの間に見聞きしたことや、それについて思ったことなどを2回に分けて、率直に共有するものである。今回は、その1回目であるが、それが、少しでも読者のアフリカに対するイメージを変えたり、アフリカへ行きたいという気持ちを引き出したりすることにつながれば幸いである。*1まずは簡単に私の経歴等を紹介したい。というのも、 54 ファイナンス 2022 Nov.前述の通り、このエッセーは主観的なものであり、経歴を共有した方が、読者に私の知識や考え方における偏りを察してもらえると思うためだ。私は、2004年に財務省に入省し、2007年に国際局の開発機関課という国際開発銀行(Multilateral Development Banks. 略してMDBs)を担当する課に配属された。それ以降、開発(Development)・開発金融(Development Finance)に関心があり、2011~14年にはアジア開発銀行、2018~21年には世界銀行に出向する機会を得ており、現在のアフリカ開発銀行が、3回目のMDBs勤務である。このため、開発経験はそれなりにあるし、公私で多くの途上国を訪れており、途上国への関心は一般より高い方でないかと思う。なお、MDBsというのは、日本を含む世界の各国政府が株主になっている銀行であり、インフラ整備や制度改革等に必要な資金を途上国政府や民間企業に貸し付けるなどし、加盟国の経済社会的な発展に貢献することを主な使命とする国際機関である*2。ここで共有したいのは、これほど途上国に関心が高い私でも、つい数年前にアフリカに実際に行くまでは、無意識にアフリカを意識の外に置いていたということである。もちろん、アジアが成長した現在にあっては、世界銀行の最貧国向け支援の大半はアフリカ向 1 アフリカは遠い? 海外ウォッチャーとりあえず、アフリカに行こう(1)

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