ファイナンス 2022年11月号 No.684
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(%)(図表2)トキ消費の3要素とライブエンタメとの親和性(図表4)直接鑑賞したことがある文化芸術(n=20,006)(図表3)ライブエンタメ市場規模の推移(図表6)ライブエンタメの平均チケット価格の推定値推移8,5008,0007,5007,0006,5006,000(円)(図表8)オンライン配信の市場規模推移で行い観客を楽しませるもの」と定義することとする。サートプロモーターズ協会「2021年基礎調査報告書」、ぴあ株式会社「チケット制有料オンラインライブ市場規模」(2022年6月15日)・近年、消費行動の傾向として、購入したモノやサービスからどのような経験・体験を得るかという「コト消費」だけでなく、その瞬間・場所・人でしか味わうことのできない価値を共有する「トキ消費」にも重きが置かれるようになってきている(図表1)。・ライブエンタメは、「トキ消費」の3要素である「非再現性」「参加性」「貢献性」をすべて満たすものであり(図表2)、こうした新しい消費潮流の中で、年々早いペースで拡大してきた。・新型コロナウイルス(以下「コロナ」)の感染が拡大する前の2019年には、ライブエンタメの市場規模は6,295億円となっており、この10年間で約2倍に拡大している。2020年以降、大きく落ち込んだものの、2023年には2019年の水準まで回復し、2025年には6,639億円となり、市場規模はコロナ前を超えて拡大していくことが予測されている(図表3)。※ なお、「ライブエンタメ」の正確な定義はないため、本稿では「音楽・演劇(ミュージカル、歌舞伎)などステージでのパフォーマンスをホールや劇場といった施設(図表1)今後、広がると考える消費潮流(n=1,500)403020100・しかし、ライブエンタメは、多くの人にとって身近なものにはなっていない。1年のうちに直接鑑賞したことがある文化芸術をみると、ライブエンタメは5位以降まで挙げられていない(図表4)。文化芸術を直接鑑賞しなかった理由として「関心がなかったから」と回答した人が、コロナに関する理由を除き最も多く、さらに、会場が遠方であることや費用も理由として挙げられている(図表5)。・確かに、リアルライブのチケット価格は上昇傾向にあり(図表6)、公演の開催は東京、大阪、愛知などの人口規模が大きい都市に集中する傾向がある(図表7)。ライブエンタメに触れる機会が限られてしまうことで、「関心がない」層には勿論のこと、関心がある層にも十分に訴求できていない。ライブエンタメ市場のさらなる発展には「会場へのアクセス」「費用」といったボトルネックを解消すること、さらに「関心がない」層を取り込み、市場に参加する人を増やすことが重要であると考える。・ボトルネックを解消する手段のひとつとなりうるのが、オンライン配信である。コロナの感染拡大を契機として、それまでほとんどなかった有料型のオンライン配信という形態が定着した。鑑賞する場所が限定されず、価格設定も低いという手軽さから、市場規模も拡大傾向にある(図表8)。映画(アニメーション除く)歴史的な建物や遺跡美術(絵画、版画、彫刻、工芸など)アニメーション映画ポップス、ロック、歌謡曲、演歌など歴史系・民族系の博物館、資料館オーケストラ、オペラ、合唱、吹奏楽などミュージカル演芸(落語、浪曲、漫才、コントなど)(%)06.66.12.72.326.6モノ消費定義3要素ライブエンタメとの親和性非再現性時間や場所が限定されている興行回数や興行場所が限られている参加性人々が主体的に参加するコール&レスポンス、手拍子、掛け声等による参加ペンライトやタオル等のグッズを皆が使うこと貢献性人々の参加によって成果がによる一体感生まれる8,8034,2861,6302,0831,2274024宮崎三重秋田徳島佐賀東京大阪愛知神奈川福岡37.336.1コト消費トキ消費1020(図表7)都道府県別公演回数(2021年)8,0006,0004,0002,0000(回)(注)図表7:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)が全国各地の正会員社を対象に行った調査をもとに作成。(出所)文化庁「文化に関する世論調査報告書(令和3年度調査)」、ぴあ株式会社「ライブ・エンタテインメント白書」(2022年6月15日)より筆者推計、一般社団法人コン38352817.611.610.99.68.9近所で公演や展覧会などが行われていない入場料・交通費など費用がかかり過ぎるテレビ、ラジオ、CD・DVD、インターネットなどにより鑑賞できる(鑑賞した)から一緒に行く仲間がいない(図表5)文化芸術を鑑賞しなかった理由(n=12,065)新型コロナウイルス感染拡大の影響により、公演や展覧会などが中止になった、又は外出を控えたから7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000(億円)音楽演劇等2010201120122013201420152016201720182019202020212022202320242025(注)図表3:推計にオンライン配信市場は含まない。2022年以降は、2022年3月までにイベント開催制限が完全撤廃され、政府の支援が2025年まで継続することを前提とした予測値。(出所)博報堂生活総合研究所「研究タグ:トキ消費」に関するHP、ぴあ株式会社「ライブ・エンタテイメント市場規模の推移予測グラフデータ」(2022年6月15日)関心がない22.816.311.97.95.3特にない、分からない(%)0東日本大震災後、年平均成長率8.3%203,8424,2601,3711,5403,1593,0613,3341,5591,4271,4191,6001,6341,9162,4712,7213,4053,3723,4663,8754,23737.628.25,8626,2951,9872,0585,1195,0155,1511,7141,6431,685448億円6,6246,4996,59620106,57420124020205,1763,0721,5251,106518589512億円年平均成長率2.4%6,3306,4836,6392,0902,1492,2101,7854,2404,3344,4293,3911,5477,5577,6687,3638,0767,4807,499※オンライン配信は含まない※平均チケット価格=市場規模÷動員数で推計20147,4947,6002016201820202021ライブエンタメ市場の現状ライブエンタメ市場の課題大臣官房総合政策課 調査員 楠原 雅人/胡桃澤 佳子本稿では、ライブエンターテインメント(以下「ライブエンタメ」)市場の可能性について考察する。コラム 経済トレンド101 48 ファイナンス 2022 Nov.ライブエンタメ市場の現状と今後の展望

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