ファイナンス 2022年11月号 No.684
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3コロナ禍における租税教室(1)ICT活用型租税教室の試み計 ファイナンス 2022 Nov. 35最近の租税教育について応募校数(中学)応募編数(中学)応募校数(高校)応募編数(高校)平成29年度平成30年度令和元年度令和2年度令和3年度7,5287,5117,4644,8776,482*8) 例えば、宮城県の石巻地区租税教育推進協議会では、毎年、小中学校教員による租税教育実践発表が行われている。国税庁ホームページ「令和3年度租税教育実践発表会(石巻地区租税教育推進協議会)」(https://www.nta.go.jp/about/organization/sendai/education/jirei_ishinomaki/r03.htm)(令和4年10月14日最終閲覧)。*9) 文部科学省『文部科学白書2021』309頁。616,072593,795578,204313,725450,1421,7501,8101,8181,3811,563218,208219,163214,421160,184178,807小学校中学校高等学校その他(注)国税庁広報広聴室調べ。現時点で把握している範囲での数字であり、実際の開催数と相違している可能性がある。個別ICT端末活用リアルタイム・オンライン443216698オンデマンド1471137358391103201464201(4) 税に関する中学生・高校生の作文の応募状況(5)小括税に関する中学生・高校生の作文の応募数については、令和2年度は、中学生で前年比54%、高校生で同75%とかなり減少したものの、令和3年度は新型コロナ前である令和元年度と比較すると、中学生で78%、高校生で83%と回復してきている(資料5)。租税教室実施後に、「税に関する作文」を夏休みの課題として出す学校も多いため、租税教室の開催回数の増減が、全体の応募数の増減に連動していると考えらえる。資料5 税に関する中学生・高校生の作文の応募状況上記のとおり、租税教室の開催回数や税に関する作文の応募件数をみると、令和2年度に新型コロナの影響により減少していたものが、令和3年度にかなり持ち直した一方、まだコロナ前の状況には戻っていないことがわかる。平成23年の閣議決定以降、充実の一途にあった租税教育が、新型コロナの影響により一時的に停滞を余儀なくされているとも言え、これまで積みあげてきた租税教育のネットワークやノウハウが解消されることのないようにすることが喫緊の課題であろう。もちろん、租税教育は、学習指導要領に記載されているのであるから、租税教室が実施されていない学校でも、何等かの形で税に関する学習が行われているのであり、租税教室の開催回数の増加がイコール租税教育の充実というわけではない。実践的な租税教育の研究会を学校教員が集まって実施している地域もあり*8、そのような「内製型」租税教育の取組みも、よく注視、評価されるべきである。そのような取組みも踏まえて、租税教育の全体像を考えるべきであるが、「内製型」租税教育の全国的な数値がなく、このような取組みをどのように継続的に把握、評価するかも今後の課題と考える。前述のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響で、租税教室の開催回数は、コロナ前よりもかなり減少したが、国税庁では、コロナ禍にあっても児童・生徒等が、従来どおりの租税教育が受けられるよう、ICTを活用した租税教室などを全国的に試行・実施してきた。折しも、令和元年6月に学校教育の情報化の推進に関する法律が公布・施行され、また令和元年度からGIGAスクール構想により、小学校段階から高等学校段階において学校における高速大容量のネットワーク環境が整備された。令和3年度からはほとんどの義務教育段階の学校において児童生徒一人一台端末(以下、「GIGAスクールPC」という。)が整備され、教育の情報化が急速に進展してきている。*9租税教育においても、このGIGAスクールPCを使った、リアルタイムオンライン型の租税教室、事前に録画した授業のデータを配信したオンデマンド方式の租税教室など、非接触型の租税教室が、コロナ禍で広がっており、資料6は、このようなICTを活用した租税教室の開催回数を示したものである。資料6 オンライン等による租税教室の開催回数(令和3年度)令和3年度に全国で年間約2万5千回行われている租税教室のうち、数%に過ぎない数ではあるが、これまでにない取組みもあるため、いくつかの興味深い事例を紹介したい。いずれも令和3年度中に実施されたものである。

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