ファイナンス 2022年11月号 No.684
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1はじめに*1戦後の租税教育は、昭和25年に国税庁が高校生向けの租税教育の補助教材を刊行してスタートし*2、以降、教育関係機関、税理士会、関係民間団体等の協力を得て、租税教室の開催等が各地で広がり、徐々に裾野が広がってきた。学習指導要領に「税」に関する記述が初めて記載されたのは、昭和43年の小学校の学習指導要領であったが、現在では、小中高の各学習指導要領に租税に関する記述が記載されており*3、学校教育において必須の学習項目となっている。国レベル■■会都道府県:■■会市町村:■ ■会地方税理士会推進体制国教育関係者関係民間団体全国で■■■会租税教育推進関係省庁等協議会(地方)租税教育推進協議会・文部科学省・総務省・国税庁・日本税理士会連合会(賛助会員)・教育関係者(教育委員会等)・地方税当局(都道府県・市区町村)・国税当局(国税局・税務署)・税理士会・関係民間団体(法人会・青色申告会・納税貯蓄組合・間税会等)(令和■年■月現在)*1) 本稿の作成にあたって、大川博史氏、萩原亮氏には大変有益な助言や示唆をいただきました。本稿の意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、国税*2) 今村千文「租税教室」NETWORK租税史料2023年1月(予定)(https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/)(校了時HP未登載)国税庁広報課(当時)は、昭和25年に、初の試みとして、新制高校の社会科の副教材として利用されることを目的とした色刷パンフレット「租税教室」(シリーズ形式、全12巻)を文部省、東京都教育庁等と協議の上刊行し、全国の教育庁及び新制高校に配付した。税務大学校租税史料室所蔵(資料12)。*3) 国税庁「国税庁70年史(平成21年7月〜令和元年6月)」154頁(https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/70th/pdf/02/02-08.*4) 市田浩恩「『租税教育の充実』について」ファイナンス2012年1月号46頁。*5) 市田浩恩・前掲注4、47頁。*6) 国税庁ホームページ掲載(https://www.nta.go.jp/taxes/kids/kyozai/jireishu/index.htm)(令和4年10月14日最終閲覧)庁の見解を表すものではありません。本稿の記述における誤りは全て筆者によるものです。pdf#page=7)(令和4年10月14日最終閲覧)2租税教育の現状(1)租税教育の推進体制会が、全国に設立されており、これを中心として、各地域における租税教室への講師派遣、副教材の作成、教員等への意識啓発研修、税の作文募集等の各種取組みが実施されている(資料1)。資料1租税教育の推進体制資料1 租税教育の推進体制この租税教育推進協議会は、昭和33年に熊本県で発足*5以降、現在は全都道府県単位及び市区町村単位で、合計767の協議会が設立されており、これらの事務局は、税務署の総務課または署の税務広報広聴官などが担っている。中央レベルでは、平成23年度税制改正大綱を契機に、平成23年11月に租税教育推進関係省庁等協議会(以下、「中央租推協」という。)が設立された。中央租推協では、関係省庁(国税庁、文部科学省及び総務省。オブザーバーとして日本税理士会連合会が参加。)が毎年協議し、租税教育の充実に向けた基本方針の策定、「租税教育の事例集*6」の作成などを行っている。次図(資料2)は、これらの協議会を中心とした、租税教育の取組みの全体像を概略的に示したものであ 32 ファイナンス 2022 Nov.平成以降、租税教育に関し、一番の転機となったのは、平成23年度税制改正大綱(平成22年12月16日閣議決定)であった。これにおいて、「租税教育の充実」が初めて閣議決定され、関係省庁及び民間団体が連携して租税教育の充実に取り組むこととされた*4。以降、租税教育は充実の一途にあったものであるが、最近は折からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時的に停滞を余儀なくされている面もある。本稿では、コロナ禍における租税教育の現状を踏まえ、今後の租税教育の在り方、特にICT活用型租税教育の推進について整理、検討することとしたい。租税教育の環境を整備し、租税教育の充実を図るため、国税当局、地方公共団体、教育関係機関、税理士会、関係民間団体等を構成員とする租税教育推進協議税務大学校研究部長(前国税庁広報広聴室長) 江崎 純子ICT活用型租税教育の推進~最近の租税教育について~新型コロナの影響と

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