ファイナンス 2022年11月号 No.684
33/92

ファイナンス 2022 Nov. 29しまなみ海道随一の展望スポット、亀老山展望台からの来島海峡大橋 (公社)今治地方観光協会 提供 第3回 四国・今治地方観光写真コンテスト入賞作品:入賞作品紹介:四国・今治地方観光写真コンテスト(oideya.gr.jp)海上でモルタルを製造する世界最大のモルタルプラント船「世紀」を開発。予期せぬトラブルも人々の熱い思いと団結力で対応し、瀬戸大橋が完成。本州四国連絡高速道路(株)提供 本州四国連絡橋公団発足50周年 夢の架け橋ヒストリー|瀬戸マーレ vol.45(jb-honshi.co.jp)瀬戸内海今昔 (3)讃岐 金毘羅(4)淡路島四国。万葉集に朝廷の使者として讃岐に赴いた歌聖、柿本人麻呂の「玉藻よし 讃岐の国は 国柄か 見れども飽かぬ…」と長歌にうたわれた讃岐。海賊だけでなく、瀬戸内海は、濃霧や強風がたびたび発生して船の行く手を阻み、多島海特有の浅瀬や暗礁、急潮流が原因で海難事故が多発。海路の安全祈願をしたくなるのも人情。現在も備讃瀬戸は水先人の乗船が義務づけられている11の強制水先区の一つ。金刀比羅宮は、香川県琴平町にある象頭山に鎮座。金毘羅神への信仰は近世に入ってからといわれ、その担い手は船頭をはじめとする船乗りが中心。宝暦3年(1753)には、大阪から金毘羅参詣だけを目的とした金毘羅船と呼ばれる客船が造られ、定期航路が開かれ、これが日本最初の旅客船航路と言われる。海の安全と言えば、本四架橋のきっかけは、濃霧で修学旅行生ら168人が犠牲となった国鉄宇高連絡船「紫雲丸」の沈没事故。世間に与えた衝撃は大きく、建設省と国鉄が架橋建設に向けて本格的に調査を開始。結果、3ルートで建設されることが決定。瀬戸大橋は、瀬戸内海の優美な多島海の真ん中を通る道路37.3km、鉄道32.4km、海峡部9.4kmに架かる6橋の総称。架ける場所の地形、地質、景観によって最適な構造を選択。道路だけでなく鉄道も通す2層構造の橋をこの規模でつくるのは世界初。乗り越えなければいけない課題が多く、新たな技術開発。なかでも難関は、橋を支えるための土台建設。瀬戸大橋には海中基礎が11基、最も深いところで50m、約14階建てビル相当の巨大な土台を「海の銀座」といわれる国際航路で、好漁場の海域に影響を与えずにどうやって海中に確実に頑丈な土台を築くことができるか、度重なる議論と調査、実験の結果、確信をもって採用されたのは、設置ケーソン工法。あらかじめ工場で組み立てた鋼製の箱(ケーソン)を船で引いて海中に沈め、そこに粗骨材を詰め、隙間にモルタルを注入して固める。モルタルの注入は何昼夜もかかり、途切れると継ぎ目ができて弱くなるため連続注入が必須。モルタルを供給する船の開発が工事を左右したという。瀬戸大橋を望む倉敷の鷲羽山展望台は、NIKKEIプラス1の「『多島美』めでる展望台』10の5位。柿本人麻呂が「淡路の 野島の先の 浜風に 妹が結びし 紐吹き返す」(万葉集 二五一)と詠んだ淡路島。旅立つ夫の着物の紐を結ぶのは、自分の魂を半分結び夫を守るという当時の習俗だといい、人麻呂は淡路島の北に立ち、遥か故郷の妻を思いやっているという瀬戸内海の船旅の歌の中の一首。万葉集、古今和歌集、新古今和歌集でもたびたび詠まれる淡路島。『古事記』の冒頭を飾る「国生み神話」、「イザナギ・イザナミの二柱の神様が、生まれたばかりの混沌とした大地を天沼矛で塩コオロコオロとかきまわし、矛先から滴り落ちた塩の雫が凝り固まった『おのころ島』で夫婦となって日本列島の島々を生んでいく。その中で、最初に生まれた“特別な島”が淡路島」だという。

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る