ファイナンス 2022年11月号 No.684
22/92

4我が国における非価格競争入札の実績以上が海外の非価格競争入札の概要になりますが、ここから、我が国の非価格競争入札に係る追加的な内容について取り上げます。*37) https://www.aft.gouv.fr/en/dernieres-adjudications*38) フランス国債庁の資料に、BTF、Fixed-rate OAT、in■ation-indexed OATについてのMaximum amount allocated for NCBsとして、25% *39) フランス国債庁の資料では、「The NCB allocation coef■cient for each SVT in each category of securities corresponds to the arithmetic mean of its purchases of all of the lines sold at the three previous auctions of securities in the same category (not including the current auction)」と記載しています。詳細は下記の資料(SVT CHARTER Appendices)のAppendix 3 Note 4を参照してください。 https://www.aft.gouv.fr/■les/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdf*40) イタリアでは前者をcompetitive yield auction、後者をmarginal price auctionと記載しています。 *41) Department of the Treasuryのウェブサイトの「Auction reopening reserved for government bond specialists」の項目において「The maximum amount offered in reopenings is usually 10% of the ordinary BOT issue. For medium/long-term bonds it is 30% of the amount offered in the ■rst tranche of new bonds and 15% for the following reopenings.」と指摘しています。 https://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3と記載されています。詳細は下記の資料(SVT CHARTER Appendices)のAppendix3を参照してください。 https://www.aft.gouv.fr/■les/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdfhttps://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3 3.5 イタリア 18 ファイナンス 2022 Nov.は、財務省の管轄下である一方で、一定の独立性を有した組織(semi-autonomous)として設立されています(Lemoine, 2016)。フランスでは、競争入札後に第Ⅱ非価格競争入札類似の制度(コンベンショナル方式で販売される国債について、価格競争入札の平均価格で発行されます)が実施されており、Non-competitive bids(NCBs)*37と呼ばれています。SVTはNCBsに参加する資格を有し、落札額の25%まで応募できることとなっています*38。フランスのNCBsの特徴としては、例えば、当日の落札額を参照する我が国の非価格競争入札とは異なり、当日を含まない同種の国債の直近3回の落札実績で応札限度額が決まることが挙げられます*39。イタリア国債には、固定利付国債(BTP)に加え、ゼロ・クーポン債(CTZ)、短期国債(BOT)、物価連動国債(BTP€i)、変動利付国債(CCTeu)があります。また、イタリアでは、BOTのみコンベンショナル方式での利回り競争入札が実施されていますが、それ以外についてはダッチ方式による価格競争入札で発行されている点が特徴です*40。また、Specialists(イタリア語でSpecialisti)がPDに相当します。イタリアでは、大宗の国債についてダッチ方式が用いられているところ、第Ⅰ非価格競争入札に類似する仕組みは存在しません。他方、第Ⅱ非価格競争入札に類似するreopenings reserved for Government bond Specialistsは実施されています。reopenings reserved for Government bond Specialistsの重要な特徴は、年限ごとにその応札限度額が異なる点です。具体的に、Specialistsはreopenings reserved for Government bond Specialistsに参加し、発行額の10%ないし30%まで応募できることとなっています。コンベンショナル方式で発行されるBOT(償還期限12か月以下)については、競争入札の平均価格で落札額の10%まで、ダッチ方式で発行されるCTZやBTPについては、価格競争入札の落札価格で落札額の30%(リオープンは15%)まで応札することができます*41。また、イタリアのreopenings reserved for Government bond Specialistsは、その名称からも分かるとおり、PDに相当するSpecialists向けのリオープン制度の一環として機能している点も重要な特徴と言えます。Specialistsは、競争入札への一定程度の参加が求められており、その対価として、reopenings reserved for Government bond Specialistsに参加する資格を有するという仕組みになっています。PDが第Ⅰ非価格競争入札を使う理由については、服部・石田・早瀬・堀江(2022)で直観的に説明しましたが、ここではPDの視点に立って、各回の第Ⅰ非価格競争入札に参加している背景を考えます。例えば、読者がPDのトレーダーであるとして、顧客から入札の平均価格で100億円分の10年国債を購入したいとの注文を受けたとします。この場合、読者は、入札において100億円分の10年国債を確実に落札する4.1 PDが第Ⅰ非価格競争入札を用いる理由まず、図表7は、第Ⅰ非価格競争入札の、応札上限額に対する応札率を時系列で整理したものです。この図をご覧いただくと、年限・時期によってばらつきはあるものの、一貫して50%を上回る行使率となっており、近年、90%程度であることが分かります。

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る