ファイナンス 2022年11月号 No.684
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ファイナンス 2022 Nov. 17図表5 リテンション・クオートの推移図表6 ドイツ国債のオークションの流れ (出所)Finanzagenturウェブサイトより抜粋RETENTIONQUOTE*33) Rocholl(2005)は、German Treasury Marketを説明する2節で「There is no upper limit on the number of bids that bidders may submit in the competitive tender and there is no maximum amount that bidders may demand in the non-competitive tender」(p.5)と指摘しています。*34) 1999年からの単純平均で計算しています。*35) 財務省理財局(2021)等を参照。*36) 例えば、Primary Dealer Systems:Draft Background Noteでは、「Germany has a “quasi-PD system” by limiting the access to the primary market to banks meeting some conditions, including a minimum market share.」としています。 https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/240992021(accum.,in%ofauctionvolume)17.1202020.8(出所)Finanzagenturウェブサイトより抜粋201922.1201819.4201720.7201621.5201518.4201416.0201316.7201218.93.4 フランス(4) 最後に、非価格競争入札においてどれだけ落札できるのかを当局は定めることができる。(5) リテンションの割合が決定される。競争入札については、最低落札価格を超えた札について、自らが応札した価格で購入することになるので、この入札方式は、コンベンショナル方式と整理できます。また、非価格競争入札については、コンベンショナル方式で販売される国債について、価格競争入札の平均価格で落札されます。さらに、ドイツにおける非価格競争入札については、その上限額は定められていません*33。実際の入札の結果は、Finanzagenturのウェブサイトに掲載されていますが、非価格競争入札の割合は、平均すると応札額全体の4割程度*34です。もっとも、前述のとおり、入札の方式そのものが大きく異なるため、この数値は単純に他の先進国と比較できない点に注意してください。入札に参加するグループとして、欧米の大手銀行などを主体とするBund Issues Auction Groupがあります*35。なお、日本や米国が有するようなPD制度は、ドイツには存在していませんが、発行市場における参加を一定程度制限しているという点では、PD制度への類似性を有するという意見もあります*36。なお、歴史的には、かつてはブンデスバンクが国債の発行を担当していたのですが、現在では、2001年に政府から独立したFinanzagenturがその役割を担っています。Finanzagenturは、財務省による100%出資会社であり、発行計画の立案や入札などを担っています。ただし、前述のとおり、ブンデスバンクがオペレーションなどの事務を担うこともあります。フランスの国債は、短期国債(BTF)、中長期国債(OAT)、物価連動国債(OATi,OAT€i)に大別され、入札はコンベンショナル方式に基づく利回り又は価格競争入札により実施されています。フランスでは、SVT(フランス語でSpécialistes en Valeurs du Trésor)がPDに相当すると考えられています。フランスの国債については、フランス国債庁が管理しています。歴史的には、政治と一定の独立性を保ちつつ、市場参加者の意見や需要を迅速に反映できる組織が必要との問題意識の下、前述のイギリスの債務管理庁やドイツのFinanzagenturを参考にしながら、現在のフランス国債庁となりました。フランス国債庁

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