ファイナンス 2022年10月号 No.683
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*7) ここでは税額の推計ができないなどの理由から、(1)年齢・性別が不詳である世帯員がいる世帯、(2)世帯員がいる世帯、(3)転出者がいる世帯をサ*8) ここでは調査票から得られない情報による控除(障害者控除、医療費控除、住宅借入金等特別控除など)は考慮していない。表1 税制の変遷(注)財務省財務総合政策研究所『財政金融統計月報』より筆者作成税率給与所得控除公的年金等控除基礎控除配偶者控除配偶者特別控除扶養控除老年者控除控除額:50万円ンプルから除外している。5段階(10, 20, 30, 40, 50%)最低控除額:65万円※収入に応じて控除額増加最低控除額 65歳未満:60万円 65歳以上:120万円※収入に応じて控除額増加控除額:35万円控除額 一般:35万円 70歳以上:45万円最高控除額:35万円※配偶者の収入に応じて控除額減少※控除対象配偶者の上乗せ適用あり控除額 一般:35万円 16歳以上23歳未満:45万円 70歳以上:45万円所得税19897段階(5, 10, 20, 23, 33, 40, 45%)所得割最低控除額:65万円※収入に応じて控除額増加※控除額上限:220万円最低控除額 65歳未満:70万円 65歳以上:120万円※収入に応じて控除額増加控除額:38万円控除額 一般:38万円 70歳以上:48万円※本人の収入に応じて控除額減少最高控除額:38万円※配偶者の収入に応じて控除額減少※本人の収入に応じて控除額減少※控除対象配偶者の上乗せ適用なし控除額 一般(16歳以上):38万円 16歳以上23歳未満:63万円 70歳以上:48万円なし2019 市町村民税:3段階(3, 8, 11%) 道府県民税:2段階(2, 4%)※均等割あり最低控除額:57万円※収入に応じて控除額増加最低控除額 65歳未満:60万円 65歳以上:120万円※収入に応じて控除額増加控除額:28万円控除額 一般:28万円 70歳以上:29万円最高控除額:14万円※配偶者の収入に応じて控除額減少※控除対象配偶者の上乗せ適用あり控除額 一般:28万円 70歳以上:29万円控除額:48万円住民税1989所得割 市町村民税:一律(6%) 道府県民税:一律(4%)※均等割あり最低控除額:65万円※収入に応じて控除額増加※控除額上限:220万円最低控除額 65歳未満:70万円 65歳以上:120万円※収入に応じて控除額増加控除額:33万円控除額 一般:33万円 70歳以上:38万円※本人の収入に応じて控除額減少最高控除額:33万円※配偶者の収入に応じて控除額減少※本人の収入に応じて控除額減少※控除対象配偶者の上乗せ適用なし控除額 一般(16歳以上):33万円 16歳以上23歳未満:45万円 70歳以上:38万円なし2019 62 ファイナンス 2022 Oct.握することができる。本稿では各世帯員の属性および収入の情報に現実の制度を適用し、世帯ごとに年間ベースの所得税、住民税、公的年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料の負担額を推計する*7。収入データは『全国家計構造調査』の「年収・貯蓄等調査票」にある年間収入を使用する。年間収入には11個の内訳項目があり、さらに各内訳項目で「世帯主」「世帯主の配偶者」「その他の世帯員(65歳未満)」「同(65歳以上)」の収入を調査している。ただし、「その他の世帯員(65歳未満)」「同(65歳以上)」において複数の者がいる世帯では、それぞれの分類に該当する世帯員の収入の合計額しか把握できない。そこで、まず個人の収入が把握できる世帯主と配偶者の収入から、性別・年齢階層別の平均収入を求める。その上で、「その他の世帯員(65歳未満)」「同(65歳以上)」において複数の者がいる場合は、合算されている収入を先の平均収入の比率に従って世帯員ごとに按分する。所得税・住民税額を推計するにあたっては、社会保険料控除で使用する保険料額も推計する必要がある。保険料額の推計では、まず各世帯員がどの社会保険制度に加入しているかを特定する必要がある。ここでは公的年金・健康保険・介護保険・雇用保険の各制度について、世帯員ごとに加入制度を推定したのち、現実の保険料計算式を適用して保険料額を推計する。所得税・住民税額の推計では、世帯の属性や収入の情報に現実の税制を適用して金額を求める。所得税法では10の所得区分に分類されるが、ここでは『全国家計構造調査』で利用可能である「給与所得」「事業所得」「雑所得」「不動産所得」といった所得を対象として合計所得を計算する。次に、合計所得から各種の所得控除を差し引いて課税所得を計算する。ここで適用する控除は基礎控除、配偶者(特別)控除、扶養控除、老年者控除(2004年まで)、社会保険料控除、給与所得控除、公的年金等控除である。社会保険料控除は先に推計した保険料額を使用する。最後に、課税所得に対して所得税・住民税の限界税率表を適用することで総合課税分の所得税・住民税額を推計する。なお、ここでは定率減税(1994年から2006年まで)、調整控除(2007年から、住民税のみ)、復興特別所得税(2013年から)も考慮する*8。3.2 収入データの扱い3.3 税および保険料の推計方法

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