ファイナンス 2022年10月号 No.683
55/82

62021620206201962018 0ファイナンス 2022 Oct. 51(出所)中国国家統計局15010050▲501-2101-2101-2▲30.3101-2101-2862022大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 時永 和明習近平国家主席はこういった問題に対し、社会格差の是正を目指す「共同富裕」のスローガンを掲げ、様々な政策を打ち出してきた。主なものとしては、2020年8月に発表された、「三道紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる不動産融資規制や、2020年12月に発表された、金融機関の融資総額に対する不動産関連融資の割合の上限を設定する措置があり、そのほか各地方政府においても、中古物件の参考価格の設定、物件の複数購入の制限、企業の運転資金や消費者ローンの住宅購入への転用の監視など、様々な不動産市場の過熱抑制策が導入された。足元ではこれらの規制策に加え、散発的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴う封鎖措置などの影響によって、不動産市場の落ち込みがみられている。不動産企業の財務状況は悪化した。特に昨年の夏頃に財務状況が悪化し話題となった恒大集団は1996年に設立され、不動産ブームに乗じて急成長した大手不動産企業である。借入れに依存した投資や、事業の多角化により2021年6月時点の負債総額は1兆9,665億元(約40兆円)にまで膨らむなど、資金繰りが悪化し経営難となった。同社は外貨建て債務の債権者に対して2022年7月末までに債務再編計画を発表するとしていたが、その後2022年内にコラム 海外経済の潮流1411.はじめに中国ではこれまで、急速な経済発展、都市部の人口増加、強い持ち家志向、富裕層による不動産投機の過熱などを背景に、住宅価格の上昇が続いてきた。特に都市部の住宅価格は、庶民が簡単に手を出せない水準にまで高騰した。2.各種規制策の不動産企業への打撃上述した不動産関連政策などの影響を受け、多くの発表すると先延ばしている。その他の不動産企業においても財務状況が悪化し債務不履行が相次いでおり、多くの不動産企業が規制策の打撃を被っている。不動産市場にとって「ゼロコロナ政策」は、建築に要する原材料の生産や物流の停滞といったサプライチェーンの混乱、工事の停止、さらには経済活動の抑制に伴う消費者の需要の低下など、様々な悪影響が考えられる。3.「ゼロコロナ政策」の影響中国では、コロナウイルス感染拡大への対応として、感染者が出た地区は厳格な封鎖措置や徹底したPCR検査の実施など、「ゼロコロナ政策」を継続している。4.住宅市場の落ち込みこうした要因により、住宅市場は供給、需要の両面から低迷しているとみられ、中国の住宅販売額や住宅価格といった指標はこのところ低下が続いている。【図表1】住宅販売額の伸び率(年初来累計前年比:%)中国の不動産市場

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る