ファイナンス 2022年10月号 No.683
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ファイナンス 2022 Oct. 43「白さにこだわった」クロード・モネの部屋。「白」の基準もまた鑑賞を損なわない配慮が込められ、壁面は漆■で仕上げ、床には70万個もの大理石のピース。部屋全体が天井からの間接光をやわらかく拡散させている。クロード・モネ室 写真:畠山直哉:ベネッセアートサイト直島(benesse-artsite.jp)瀬戸内海今昔 不思議な感覚を味わえるのは(オープンフィールド)。クロード・モネ・スペースには5枚の「睡蓮」。フランス大使も「こんなに大きな「睡蓮」が日本にあるのかと驚いたという中央の巨大な絵がこの美術館を作ったきっかけ。「白さにこだわった」モネの部屋、空間で壁面は漆喰で仕上げられ,スリッパに履き替えて入るこの部屋の床は、ミケランジェロと同じ採石場でとれた2cm四方の立方体に切り分けられた70万個の白い大理石を,地元住民も参加し,手作業で一つひとつ埋め込む。南寺。「家プロジェクト」という古い家屋などを改修して家の空間そのものをアート作品にするというプロジェクトの第2弾の作品で、地中美術館にもあるタレルの作品を展示している。古い建物を改装してタレルの作品を埋め込んだように見えるが、中古物件ではなく直島の町並みに馴染むように設計された新築物件。「以前に《Backside of the Moon》という作品を買っていて、どう展示したらよいか、ずっと考えてい」た福武が安藤に依頼。1999年、地中美術館に先立って建設。制作にあたり、タレルは、内部空間に入った瞬間、空間の寸法には一切目を向けず、「どんどん暗くしろ、どんどん暗くしろ」と照度を調整したという。この作品を鑑賞するには、真っ暗な室内で目が慣れるまで10分以上、じっと耐えると、観覧者は暗闇の中で不思議な体験ができる。ANDO MUSEUM。外見は変哲もない築約100年の古い民家。中に入ると打ち放しコンクリートの安藤忠雄の世界が広がる。トップライトからの光が館内を照らす安藤建築を体感する空間。李禹煥美術館。自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示するスタイルを「もの派」というらしい。現在ヨーロッパを中心に活動するアーティスト李禹煥。半地下構造となるこれも安藤忠雄設計のなだらかな谷あいに立つこの美術館は、「安藤忠雄設計の自然の地形を生かした建物と、正面に建つ李氏の作品とが響きあい、縦と横の緊張感を生み出」すという。ベネッセハウス ミュージアムの開館30周年となる今年、瀬戸内国際芸術祭開会前の3月に安藤忠雄設計の「ヴァレーギャラリー」が李禹煥美術館向かいの山間にオープン。祠をイメージした半屋外建築とその周辺の整備により、「自然の中に点在するベネッセハウスの各棟や美術館施設が繋がり、エリア全体のランドスケープの体感を促」すという。草間彌生の《ナルシスの庭》(1966/2022)は、草間が「1966年のヴェネチア・ビエンナーレでパビリオン外の芝生に大量のミラーボールを敷き詰め、世界的注目を集めるようになったモニュメンタルな作品」。ここでは約1,700個のミラーボールが建築の屋内外に並ぶ。宿が少ない直島に今春、本格旅館「直島旅館 ろ霞」がオープン。水と火をコンセプトとして、「日本の絶景宿」でも紹介されるこの宿、犬島「家プロジェクト」や昨年、銀座SIXの吹き抜けに浮かぶ彫刻作品「Metamorphosis Garden(変容の庭)」を展示した名和晃平ら若手アーティストの作品が各所に展示。全11室の客室内の作品も茶室の掛け軸のように展示替えされ、宿泊客が購入できるという、いわば泊まれるギャラリー。「自然を感じながら現代アートに触れる」宿だという。地中美術館の後、BASNの活動を瀬戸内海の他の(2) 犬島「アートで島を再生したいー犬島精錬所美術館」

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