ファイナンス 2022年10月号 No.683
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[14]. フランクリン・アレン(著)、グレン・ヤーゴ(2014)「金融は人類に何をもたらしたか:古代メソポタミア・エジプトから現代・未来まで」東洋経済新報社[3]. 佐藤隆文(2007)「バーゼル2と銀行監督―新しい自己資本比[10]. 横山昭雄(1989)「金融機関のリスク管理と自己資本━4おわりに今回はバーゼル規制の基礎的な内容について説明をしました。次回はその他Tier1資本およびTier2資本を取り上げることを予定しています。*49*50ファイナンス 2022 Oct. 39*49) アドマティ・ヘルビッヒ(2015)のp.149-150より抜粋。*50) これ以外にも、MM定理を単純に銀行に適用することに疑問を投げかける意見もあります。例えば、アーマー等(2020)のp.459を参照してください。参考文献[1]. 池尾和人(2010)「現代の金融入門」ちくま新書[2]. 北野淳史・緒方俊亮・浅井太郎(2014)「バーゼルIII 自己資本比率規制 国際統一/国内基準告示の完全解説」きんざい率規制」東洋経済新報社[4]. 千野忠男(1988)「自己資本比率規制の国際的統一と今後の課題」『金融』全国銀行協会連合会[5]. 服部孝洋(2021)「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)入門―バーゼル規制からみた金利リスクと日本国債について―」『ファイナンス』6月号、60–69.[6]. 服部孝洋(2022)「米国MMF(マネー・マーケット・ファンド)入門−ホールセール・ファンディングと金融危機以降の規制改革について−」『ファイナンス』4月号、28−37.[7]. 秀島弘高(2021)「バーゼル委員会の舞台裏」金融財政事情研究会[8]. 氷見野良三(2005)「検証 BIS規制と日本」金融財政事情研究会[9]. 三木麻有子・源間康史(2015)「バーゼルIII対応資本性証券について」日銀レビュー 2015-J-71990年代の金融機関経営の原点」有斐閣[11]. 渡部訓(2012)「バーゼルプロセス―金融システム安定への挑戦」蒼天社出版[12]. アナト・アドマティ、マルティン・ヘルビッヒ(2014)「銀行は裸の王様である」東洋経済新報社学者の中には現在の自己資本比率規制は甘いものであり、銀行はレバレッジを高めるインセンティブを有していると主張する意見もあります。有名な批判の例は、スタンフォード大学のアナト・アドマティ教授らによるものであり、具体的には、自身の著書(アドマティ・ヘルビッヒ, 2015)で、50%を超える自己資本比率の水準を求める提案をしています。アドマティ教授らは、実務家はしばしば自己資本の資本調達コストが高い、という主張をするところ、ファイナンスのテキストで言及される「モジリアーニ・ミラーの定理(MM定理)」のロジックを用いながら、議論を展開しています。MM定理の基本的なアイデアは、企業の価値はどのように資産を使うかによって決まり、どのように調達したかには依存しないというものです。MM定理からすれば、「負債と自己資本の配分を変えて債権者と株主の間でリスクとリターンをどのように分けようとも、それ自体で会社の価値や資本調達コストが影響されることはない」*49わけです。もちろん、MMの定理には税制などを捨象したり、完全な資本市場を仮定するなど、非現実的な想定があり、コーポレート・ファイナンスのテキストではこれらを考慮した場合、どのように結果が修正されるかについても議論されます。アレン・ヤーゴ(2014)は「現実は、理想の世界とは異なり、企業が資本構成を選択する際、資本市場の不完全さや税金が存在する」(p.43)としたうえで、「『M&M定理』やその他の重要な金融理論の大きな価値は、いつ、なぜ、どのような場合に、資本構成が問題となるかを明らかにしたことにある」(p.43)と指摘しています*50。その一方で、大学のコーポレート・ファイナンスの講義において最適な資本構成についてはまずはMM定理から議論を進めますから、その基本に立ち返ってMM定理の内容とその限界を理解したうえでバーゼル規制を考えることも重要であると感じています。[13]. ジョン・アーマー、ダン・オーレイ、ポール・デイヴィス、ルカ・エンリケス、ジェフリー・ゴードン、コリン・メイヤー、ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい[15]. ベン・バーナンキ(2015)「危機と決断 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録」角川書店バーゼル規制入門

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