ファイナンス 2022年10月号 No.683
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*21) 金融庁の健全性基準室などがその役割を担っています。(5)国際的な検討の枠組み図表2 規制改革の国際的な検討の枠組み【規制改革の国際的な検討の枠組み】(出所)みずほ総合研究所(資料)みずほ総合研究所作成◯G20首脳会議(サミット)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議において、規制改革の大きな方向性を提示◯FSB(金融安定理事会)、バーゼル委等が規制改革に係る具体的な国際基準を策定◯各国当局は、国際基準に基づき、国内ルールを策定・実施◯欧米においては、国際基準よりも厳しい国内規制を導入する動きや、独自の規制を導入する動きありGHOS(中銀総裁・銀行監督当局長官グループ)メンバー:主要国の中央銀行・銀行監督当局事務局:(国際決済銀行)に設置報告・提言銀行(バーゼル銀行監督委員会)バーゼル委意見等意見等G20声明等FSB(金融安定理事会)証券(証券監督者国際機構)IOSCO保険(保険監督者国際機構)国際基準を策定各国当局国内規制を策定・実施金融機関メンバー:①主要国の中央銀行・財務省・金融監督当局、②バーゼル委等の基準設定主体、③等の国際機関事務局:に設置IAIS7 32 ファイナンス 2022 Oct.スポート機能」があります。そもそも、海外への投資や海外ビジネスの展開を考えたことがある人は、海外における制度が日本と大きく異なることが少なくないという実感があるはずです。その際、各国ごとに制度が大きく異なるとしたら、その違いを調べるだけで大変です。これは国際的なビジネスをするうえで複雑性を生みますが、金融システムに影響を与えるような大手金融機関の場合、その問題が深刻になりうることは容易に想像できます。特に問題である点は、ある国で(他国に対して)緩やかな規制を課しているというケースです。この場合、その国に準拠する大手金融機関が破綻した場合、その破綻が自国の金融システムに対して大きなマイナスの影響をもたらしかねません。そこで、国際的に活動する金融機関については、どこかで最低限、守るべき共通のルールを作り、そこで作った最低限のルールを各国で課すことができれば、政府からみれば、「共通ルールに準拠しているのであれば、自国内で他国の銀行がビジネスを展開しても、最低限のルールを順守したうえでビジネスを展開している」という判断ができます。これはビジネスを展開するうえで、「パスポート」のような役割を果たしているといえます。しばしばバーゼル規制の重要性としてこのようなパスポート機能が指摘されますが、もちろん、バーゼル規制が中立的でないという議論はありえます。導入直後は、日本にとって不利だという議論が展開されました。自己資本比率における8%という水準自体にそもそも根拠が希薄という議論もあります(この点はBOX 1で説明します)。金融ビジネスはどうしても米国や英国が中心的な役割を担っていますから、米国や英国の意見が反映される傾向があるという声も少なくありません。その一方で、金融という国境を超えるビジネスにおいて、各国で共通の土台を有するメリットが大きいことや、国際的な金融センターとして米国と英国のプレゼンスが高い現実を直視する必要もあります。バーゼル規制についてはバーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision, BCBS)などで国際的なルールが作られ、各国ではそれに整合的なインプリメンテーションがなされています。図表2は国際的な規制における検討の枠組みを示していますが、G20の下に、主要国の中央銀行などで構成される金融安定理事会(Financial Stability Board, FSB)があり、その下に、銀行・証券・保険を担当するBCBS、証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions, IOSCO)、保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors, IAIS)があります。各国当局が集まって議論する一方で、そこで合意された国際的なフレームワークと整合的な規制を各国で課すというアプローチが採られています。我が国では金融庁が国際合意と整合的な形で、金融庁告示などに落とし込んでインプリメンテーションしていきます*21。我が国におけるバーゼル規制については国際合意を国内規制に落とし込むため、業態別の告示で規制が課され

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