ファイナンス 2022年10月号 No.683
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8%(出典)BFPG(図24)インド太平洋地域への傾斜について(%, 2021年)(%)(図25)英国は今後中国とどう関わるべきか(%, 2021年)454035302520151050(図26)英国は元宗主国として香港の人々に居住権を与えるべきか(%, 2020年)454035302520151050*65) https://www.gov.uk/government/collections/the-integrated-review-2021#integrated-review*66) https://www.theguardian.com/politics/2021/mar/16/uk-defence-policy-review-lacks-clarity-on-china-and-indo-paci■c*67) https://www.theguardian.com/politics/2021/sep/10/pm-accused-of-deliberate-strategic-void-on-china-to-prioritise-trade403830人権問題で中国に対抗気候変動など地球規模で共有する課題で協力英国の大学や高等教育機関に通う中国人学生40(出典)BFPG3830423515わからない32%与えるべきではない14%2722研究協力英国への経済的関与と財政的投資2722(出典)CEIAS同地域は経済、安全保障、外交において重要であり、英国は外交政策の中心に据えるべき同地域はグローバルな力学変化や経済成長に重要となる可能性があるが、同地域への関与は他地域とバランスを取るべき同地域に外交政策のリソースを割く強い理由はなく、その他の地位と同等にすべきわからないすべての香港人に与えるべき25%1997年以前に英国と関係があった人にのみ与えるべき29%15中国とはどんな関わりも持たない15 26 ファイナンス 2022 Oct.5終わりに―英中関係の今後英中の政治関係を、約200年の時間軸をもって香港に焦点を当てて概括した第2章を中心に、本稿で指摘してきた通り、英国は、貿易赤字を補って余りある金融所得や資本取引を得ることで国富増大を目指すという、実利重視の姿勢をとり続けてきたように見える。故に、経済的利害に乏しい地域の人権問題に関しては強硬な姿勢を取るものの、中国や香港のように、自国が既得権、あるいは将来獲得し得る利得を損なう可能性が高い場合、民主主義的価値観が脅威に晒されても、実効性ある制裁発動には慎重姿勢を見せてきた。2021年3月に発表された、今後10年間の安全保障、貿易、開発、外交に関わる英国の方針を示した「統合レビュー(Integrated Review)」*65では、中国に関して西側諸国と対峙する「体制上の競争相手(systemic competitor)」と表現するに留まり、明確な脅威とは位置付けなかった*66。これは、ジョンソン首相が経済か人権かという選択を避けた結果生じた「戦略的な空白(strategic void)」と指摘されている*67。英中関係は近年、金融分野を中心に深まり、広がりを見せているが、こうした動きは、気候変動対策に貢献するグリーンファイナンスや原子力発電所への投資拡大と相俟って、さらに深まっていく可能性がある。こうした点は、東アジアの主たる地政学リスクである台湾海峡の緊張感がさらに高まった場合の英国の対応を推し量る上での有益な材料となる。英国は「英中共同宣言」において「中華人民共和国が唯一の政府であり、台湾はその一部」とすることを基本的立場とし、中国との対立は「双方の対話を通じて解決されるべき」ことを基本姿勢としてきた。他方、英国と台湾の政治的結びつきは強く、英中国交樹立と同時期の1976年、140人の英国議員から成り、台北事務所(=在台湾英国大使館)を通じ、台湾と様々な取組みを行う「英国・台湾全党議会グループ」が設立されるなど、積極的に関係を構築してきた。2017年10月には、クラウンエステート(王室の資産を管理する機関、英国の海洋エネルギープロジェクト開発を行っている)とシティ・オブ・ロンドン関係者が訪台し、英国の洋上風力技術とグリーンファイナンスについて協力することが約束された。同年12月には、1991年に発足させた閣僚級の「英台貿易協議」が第20回の節目を迎え、英国産豚肉やスコッチウイスキーの輸入促進、再生可能エネルギーやフィンテック等の金融サービスに関する専門知識を提供することが合意されている。さらに、欧州各国で議員の訪台が相次ぐ中、2022年2月には、英下院外交委員会の議員団が台湾

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