ファイナンス 2022年10月号 No.683
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*44) 債券市場に関わる、様々な政策提言をしている英国の非営利団体。*45) https://www.parliament.uk/globalassets/documents/other-committees/intelligence-security/Critical-National-Infrastructure-Report.pdf*46) https://www.aiib.org/en/about-aiib/governance/members-of-bank/index.html*47) 1996年設置。貿易協力について話し合う年次閣僚級会合。直近では2018年8月24日、英国・フォックス国際貿易相と中国・中山商務相間。*48) 2008年設置され。2019年まで計10回開催。直近では、2019年6月17日、ハモンド英財相と胡春華副総理間。*49) https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3159255/uk-china-agree-resume-annual-economic-dialogue-same-week*50) https://www.politico.eu/article/boris-johnson-uk-china-trade-economy/*51) https://www.thetimes.co.uk/article/treasury-leak-reveals-former-chancellor-eyed-new-china-deal-hwxbm3258 22 ファイナンス 2022 Oct.発行されており前年同期比73.7%も急増している。また、2021年PBoCは統一的で厳格な「国内グリーンボンドガイドライン」を発表している。こうした動きを後押ししているのが、「英中グリーンファイナンス作業部会」のメンバーである、CBI(Climate Bonds Initiative)*44であり、グリーンボンド発行に係る政策ガイダンス、基準開発、及び認証やデータ分析等を行い、中国の地方政府、企業等が発行するグリーンボンドに対するグローバルな投資家のアクセス向上に向けた取組みに従事している。これまで紹介してきた通り、英中の結びつきは、直接投資、証券投資、そしてサステナブルファイナンスの文脈で、従来は香港経由で、近年は中国本土と直接のチャネルで、次第に強化されてきている。以下では、こうした動きを後押ししてきた、英中間のハイレベルのイニシアティブや対話の枠組みを紹介したい。A)英中黄金期第2章で紹介した通り、キャメロン政権期(保守党、2010.5.11-2016.7.13)は「英中関係の黄金期」と称される。例えば、キャメロン首相は着任から約半年後の2010年11月に財相、エネルギー・気候変動担当相、ビジネス・イノベーション・職業技能担当相、教育相の閣僚4名と約50名のビジネスリーダーを含む過去最大規模の代表団を引き連れて北京を訪れ、首脳会談に臨んだ。この訪問で「英中エネルギー対話」が発足した他、数十億ポンドの企業契約が締結された。翌年には中国側が訪英し、英国のクリーンな石炭火力技術契約など10億ポンド相当の契約が交わされている。2011年1月には、中国の李克強副首相とハーグ英国外務相が会談し、両国の貿易・投資関係を継続的に構築することを確認した。当時、英国は中国からの投資にオープンであることを強調しており*45、例えば2012年9月、キャメロン首相とファーウェイ創業者兼CEOの会談では、英国への13億ポンドの投資が約束された。この約束は、本稿3章で既にふれた、習近平主席の訪英の機会で結実した。B)AIIBとの関与2015年3月の英国のAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank)加入は英中の蜜月期を象徴する出来事と言える。G7を含む先進諸国で最初の、そして唐突にも見えた英国のAIIB加盟表明は、その後、ドイツやフランス等、欧州諸国やカナダが加盟に動くきっかけとなった。現在、英国の出資比率は3.2%(議決権比率は2.9%)*46、5名の副総裁のうち、Policy and Strategyの担当は、元英国財務省官房長(Chief Secretary)のダニー・アレキサンダー氏が務めている。C)二国間経済枠組みの再開英中間には、「英中合同経済貿易委員会(U.K.-China joint economic and trade committee)」*47と「英中経済・金融対話(Economic and Financial Dialogue)」*48という2つの閣僚級の経済対話の枠組みがある。直近の議題を見ると、これまで本稿で紹介してきた、資本規制緩和やグリーンファイナンス分野における具体的な項目が数多く盛り込まれていること分かる。香港問題を受け、2つの枠組みは停止していたが、最近になって再始動の動きがあった。2021年12月、新華社通信は、「胡春華副総理はスナク財相と電話会談を行い、2022年に第11回英中経済・金融対話を開催することに合意した」と報じた*49。また、2022年2月10日付のPolitico紙は「ジョンソン首相が英中合同経済貿易委員会を、スナク財相が英中経済・金融財政対話の再開について指示した」と伝えている*50。2022年7月28日、英中経済金融対話において英中両国間の貿易・投資・金融関係を強化する新たな経済協定に署名する寸前だったことを示す英財務省リーク文書が英タイムズ紙で報じられた*51。47ページに及ぶ協定原案には、銀行・資産運用・規制・旅行に関す(3)英中間のハイレベル経済・金融対話

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