ファイナンス 2022年10月号 No.683
23/82

20202019201820162017201520142013201220112009201020082007200620052004200220032001200019992020201920182017201620152014201320122011201020092008200720062005200420032002200119992000(出典)ONS2020201920182016201720152014201320122011200920102008200720062005200420022003200120001999ファイナンス 2022 Oct. 19*34) 先端材料、先端ロボット工学、AI、民間原子力、通信、コンピューター・ハードウェア、政府に不可欠な物品又はサービスの提供を行う者、緊急サービスに不可欠な物品又はサービスの提供を行う者、暗号認証、データ・インフラ、防衛、エネルギー、工学生物学、軍事または軍民共用の技術、量子技術、衛星及び宇宙技術、運輸*35) 対象には、(1)株式もしくは議決権を25%以上取得する取引(政府原案の15%から引上げ)、(2)保有している株式もしくは議決権が、25%、50%、75%のそれぞれの閾値を超える取引、(3)いかなる種類の決議も通せる、もしくは妨害できるだけの議決権を取得する取引が含まれる。*36) https://www.politico.eu/article/uk-minister-quietly-approve-chinese-microchip-factory-takeover/*37) 2022年5月、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が、法律に対する初期評価を発表したが、その中で審査対象が広範であることと審査プロセスに係る具体的な3つの課題を提示しており、(1)どのような投資家が適切で、そうでないかが具体的ではない故に、全てが同法の審査対象になる可能性がある、(2)エンジェル投資や初期投資に依存する企業にとって、得られる価格よりも審査プロセスに係るコストが大きく、致命的になる可能性がある、(3)新規参入企業にとっては、英国政府の国家安全保障上の優先事項を理解するのが難しくデュアルユース・テクノロジー(民生・軍事のどちらにも利用できる高度な先端技術)を行う通信、コンピュータ・ハードウェア/先端材料、人工知能セクターにとって障害になる可能性があるとの指摘がなされている。*38) https://www.gov.uk/government/news/britain-issues-western-worlds-first-sovereign-rmb-bond-largest-ever-rmb-bond-by-non-chinese-issuer(図14)対中国本土:金融資産負債残高(図15)対香港:英国金融資産負債残高英国と中国の二国間関係 (出典)ONS(出典)ONS(億ポンド)9008007006005004003002001000-100-200-300直接投資(資産)直接投資(負債)証券投資(資産)証券投資(負債)直接投資(ネット)証券投資(ネット)英国→中国中国→英国直接投資(資産)証券投資(資産)直接投資(ネット)(億ポンド)1,2001,0008006004002000-200-400-600-800-1,000-1,200英国→香港香港→英国直接投資(負債)証券投資(負債)証券投資(ネット)(図16)対香港:英国経常収支(億ポンド)100806040200-20-40-60-80貿易収支サービス収支第1次所得収支第2次所得収支経常収支外資企業が人工知能や民間原子力を含む17分野*34について、一定程度の株式や議決権を取得*35する場合、英国政府による事前審査が義務付けられる。審査の結果、リスクがあると判断された取引について、政府は阻止・是正・緩和のための措置を講じることができる。しかし、同法施行後の2022年4月に英国政府がウェールズのマイクロチップ工場の中国企業への売却等を承認したため、同法の実効性への批判が保守党議員を中心に出されている*36。また、審査対象企業が広範でリスク基準も曖昧なため、新規参入企業の障害となり、特に先端技術産業にとってはコストの方が大きいとの批判も出てきており*37、今後の動向が注視される。C)対中国本土証券取引英中間の証券投資残高を見ると、2020年末時点で、資産(英国から中国への投資)が、負債(中国から英国への投資)を5倍近く上回っている(図14)。今後も中国向け証券投資は、中国の資本規制緩和に伴う増加が見込まれる一方、現在の制度上は香港を介した取引が容易であることから、英中間の直接取引の主流化には尚時間を要すると思われる。中国から英国への証券投資の残高は2015年から伸びている。特筆すべきは、2014年10月の英国政府による、西側諸国で初めての約3億ポンド相当の人民元建てソブリン債の発行だ*38。背景には、小規模ながらも急速に成長しているオフショア人民元市場に流動性をもたらし、英国を香港に次ぐ人民元市場とするという狙いがあると思われる。D)対香港直接投資・証券投資英国―香港間の直接投資・証券投資の残高の推移を示した図15と、図14における中国本土との直接投資・証券投資の残高を比較すると、英国からの証券投資は中国向けが、直接投資は香港向けが相対的に多く、英国への証券投資・直接投資はともに、中国よりも香港からがメインであることがわかる。また、英国の対香港経常収支(図16)を見ると、2010年を境に所得収支の黒字基調が続いている。E)中国の資本規制と香港を介した資本の通り道上記で紹介した英国と中国、英国と香港間の直接・

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る