ファイナンス 2022年10月号 No.683
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*26) https://www.gov.uk/government/publications/the-national-security-strategy-of-the-united-kingdom-update-2009*27) https://www.thetimes.co.uk/edition/news/china-threatens-to-pull-plug-on-new-british-nuclear-plants-727zlvbzg*28) https://www.telegraph.co.uk/technology/2022/02/18/britain-delays-removal-huawei-telecoms-network/*29) https://www.bbc.com/japanese/60298257*30) 1994年に設立された深圳に本社を構える中国国有企業。原子力の他、太陽光、風力、水力も手掛ける。*31) https://bfpg.co.uk/2020/07/resetting-uk-china-engagement/*32) https://www.theguardian.com/environment/2021/sep/25/ministers-close-to-deal-that-could-end-chinas-role-in-uk-nuclear-power-*33) https://www.theguardian.com/environment/2022/jun/14/uk-buys-option-to-take-20-stake-in-sizewell-c-nuclear-power-plantstation 18 ファイナンス 2022 Oct.ウェイへの投資と製品の輸入を推進してきた。例えば、キャメロン在任中の2015年、英国政府は習主席訪英の際に、ファーウェイと13億ポンド規模の契約を締結している。一方、英国内のセキュリティ関連事業への海外企業参入が、重要な国家インフラ施設のサイバーセキュリティリスク等を高める懸念については、2009年に発表された「国家安全保障戦略」で既に指摘されていた*26。2014年には、国家サイバーセキュリティセンターが年次報告を開始し、2018年にはファーウェイのエンジニアリングプロセスのリスク、2019年には製品の深刻な脆弱性が報告されている。こうした中、2019年にはファーウェイの英国進出が議会でも話題になったが、この時点では、本格的な脅威と認識し具体的対応を検討するまでには至らなかった。2020年に入り、中国の香港や新疆ウイグル自治区への対応から、英国内の懸念が技術的観点から地政学的観点へと変化していく中、5G網にファーウェイが参加することについて英国国家安全保障会議が議論を開始した。中国はファーウェイをめぐる決定が「英国が中国の真の誠実なパートナーであるかどうかの試金石」となると牽制したが*27、2020年5月には、英国政府は同盟国間(D10=G7+豪州、韓国、インド)で代替5G技術の開発を促進する計画を発表し、同年7月、2020年12月31日以降にファーウェイの5G機器を新たに購入することを禁止、2027年までに英国の電気通信ネットワークからファーウェイの5G機器をすべて撤去することを義務付けることを発表し、法案作成に着手した。現在政府は通信事業者と協議し法案を作成しているが、政府案がファーウェイ機器の削減目標を半年後ろ倒ししたため、一部対中強硬派議員から批判が噴出している*28。また、2022年2月に就任した英国官邸広報部長が過去ファーウェイのロビー活動を行っていた事実も指摘されている*29。(イ)原子力発電所英国は、2050年ネットゼロに向け、原子力を再生可能エネルギーに並ぶエネルギー源とみなしており、現在8カ所での原子力発電所の新規建設が予定されている。これまで英国は、中国企業、具体的には「中国広核集団(CGN:China General Nuclear Power Group)」*30を主な出資者として受け入れてきた。かつて国営(イギリス核燃料会社(BNFL))であったが、運営が行き詰まったため、民営化に舵を切り、技術はフランス、資本は中国、というセットに移行した。例えばエセックス州のブラッドウェルB発電所のCGN出資比率は66%、サフォーク州のサイズウェルC発電所のCGN出資比率は20%、ヒンクリー・ポイントC発電所のCGN出資比率は34%となっている*31。近年、英国内で中国を巡る地政学リスクへの意識が高まる中、CGNが建設・運営に関与する原発のコストや、中国の関与自体についての議論が広がっており、2021年7月には、「英国政府がサイズウェルC原子力発電所の建設計画から中国広核集団(CGN)を排除する方向」と報じられている*32他、2022年6月には、「英国政府が、中国を排除するために、サイズウェルC原子力発電所の株式を200億ポンドで購入する方向」との報道も出ている*33。いずれも政府による公式発表ではないが、政府内で原発を巡る中国依存を見直す動きが活発化していることを伺わせる。(ウ)国家安全保障・投資法以上のような中国企業の進出を受けて、英国政府は規制に乗り出している。2021年4月、国家安全保障・投資法(NSIA:National Security and Investment Act)が成立、2022年1月4日に施行された同法では、

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