ファイナンス 2022年9月号 No.682
77/94

PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 11図表3 新型コロナウイルス感染症流行後の主な経済政策(出所)各種報道より筆者作成。発表/成立日等項目・法令名称等2020年2月27日景気刺激策パッケージ第1弾(マハティール元首相)3月16日景気刺激策の見直し(ムヒディン前首相)3月27日景気刺激策パッケージ第2弾(PRIHATIN)4月6日景気刺激策パッケージ第3弾(PRIHATIN SMEs)6月5日短期経済回復計画(PENJANA)9月23日景気刺激策補足イニシアチブパッケージ(KITA PRIHATIN)2021年1月18日経済及び国民保護パッケージ(PERMAI)3月17日国民及び経済を力づけるための戦略プログラム(PEMERKASA)5月31日国民及び経済を力づけるための戦略プログラム追加策(PEMERKASA Plus)6月28日国家国民福祉経済回復パッケージ(PEMULIH)*9) 返済猶予措置は2020年9月末に終了。規模200億リンギット(6,000億円)6.2億リンギット(186億円)2,500億リンギット(7兆5,000億円)(景気刺激策パッケージ第1弾及び見直しを含む)100億リンギット(3,000億円)350億リンギット(1兆500億円)100億リンギット(3,000億円)150億リンギット(4,500億円)200億リンギット(6,000億円)400億リンギット(1兆2,000億円)公衆衛生システムの能力強化や国民への支援策の継続、1,500億リンギット(4兆5,000億円)国民への現金補助、企業の事業継続性の支援(賃金補発表された支援策の内容観光関連産業に対する支援策。パッケージ第1弾の内容を見直し。中低所得層への現金給付や金融機関の返済・支払い猶予*9、中小・零細企業を対象とする金融支援の実施や保証の拡充等の実施。パッケージ第2弾の追加策として、主に中小企業向けの賃金補助制度を拡充。企業への賃金補助金の延長、若者・失業者の就業・能力向上支援等の雇用対策、中小企業の資金繰り及びデジタル化支援、個別セクター(観光、不動産、自動車、パーム油等)への支援等の実施。賃金助成金の3カ月延長、零細企業向け助成金の拡充、現金給付策の追加実施。医療従事者向けの物資調達、金融機関への融資返済猶予期間の延長、賃金助成金の1カ月延長等の実施。ワクチンプログラム、雇用維持及び雇用インセンティブ、女性・身障者・若者への支援等の実施。企業の事業継続性の支援を目標とした施策の実施。助プログラムにおける支給額の増額)等の実施。 2021年に入って、一時は落ち着いた新型コロナウイルス感染症が再び拡大し始め、4月には3度目の活動制限令が発令されました。更に6月には全国的に国が必要不可欠と認めたサービス以外の全ての経済活動を制限する大規模なロックダウン注3が実施され、マレーシア経済に大きな打撃を与えました。しかし、9月以降段階的に制限が解除され、経済活動が再開された第4四半期は、実質GDP成長率が前年比+3.6%となったほか、2021年通年では、+3.1%と2年ぶりのプラス成長を記録しました。ファイナンス 2022 Sep. 734.おわりに財務総研が、東南アジア諸国の政策金融機関に対する中小企業金融の技術協力を開始してから、約20年となりました。今回はマレーシアの中小企業支援についてご紹介しましたが、他の開発途上国においても、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済悪化への政策対応として、政府や中央銀行による中小企業への金融支援が実施されており、今後、これまで財務総研が技術協力を行った4ヵ国以外の国についても支援のニーズは高まると考えています。引き続き、財務総研がこれまでに築いてきた各機関との関係を活かしながら、ポスト・コロナ時代の様々な課題について知見を共有しつつ、中小企業の育成・発展を通じた各国の持続的な成長や、将来的な日本との協力関係強化に繋がるよう、技術協力を継続していく必要があると考えています。*9コラム マレーシアの経済情勢新型コロナウイルス感染症の拡大以前のマレーシア経済は、やや減速しつつあったものの、2019年通年で実質GDP成長率は前年比+4.4%を維持していました(図表4)。しかし、2020年1月にマレーシア国内で初めて新型コロナウイルス感染症が確認され、その拡大を背景に、2020年第1四半期(1〜3月)の実質GDP成長率は前年同期比+0.7%に落ち込みました(図表5)。そうした中、3月にはASEAN諸国の中で最大の感染者数を記録注1し、マレーシア全土で活動制限令注2が発令されました。これにより経済活動が大きく制限され、第2四半期(4〜6月)の実質GDP成長率は前年同期比▲17.1%とアジア通貨危機以来最悪の落ち込みを記録しました。第3四半期以降もマイナス成長が続き、2020年通年の実質GDP成長率は▲5.6%と、これもアジア通貨危機以来、最悪の落ち込みとなりました。

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る