ファイナンス 2022年9月号 No.682
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PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 11又は又は又は図表1 マレーシアにおける中小企業等の定義(出所)SME Corp. Malaysia より筆者作成。中規模(Medium)小規模(Small)零細(Micro)*5) NNA(2021b)*6) 起業家開発協力省(MEDAC)の下にある中央調整機関(設立は2009年)。関連する省庁にわたる中小企業等の開発プログラムの実施を調整するほか、中小企業等や起業家に関する調査やデータの普及等に取り組んでいる。*7) マレーシアでは、2022年2月時点で122万社以上の中小企業等が登録されており、同国内の企業数の約97%を占めている。*8) 1兆5,454億リンギット(約46兆円)。製造業売上1,500万リンギット以上5,000万リンギット以下(4億5,000万円以上15億円以下)従業員数75名以上200名以下売上30万リンギット以上1,500万リンギット未満(900万円以上4億5,000万円未満)従業員数5名以上75名未満売上30万リンギット未満(900万円未満)従業員数5名未満サービス業及びその他売上300万リンギット以上2,000万リンギット以下(9,000万円以上6億円以下)従業員数30名以上75名以下売上30万リンギット以上300万リンギット未満(900万円以上9,000万円未満)従業員数5名以上30名未満売上30万リンギット未満(900万円未満)従業員数5名未満 又は又は又はファイナンス 2022 Sep. 712. 新型コロナウイルス感染症が中小企業等に与えた影響及び中小企業等向けの支援施策同行の中小企業等向け融資審査手法、特に小規模・零細企業や新規開業企業に対する融資審査手法を改善し、融資審査期間を短縮することを目的に行われました。財務総研と日本公庫は、セミナーの開催を通じて日本公庫の新規開業向け融資審査手法等のノウハウを提供したほか、SME Bankの職員を日本に招へいし、申込書の受領や契約書の発行といった業務オペレーション方法の共有を行いました。また、日本公庫のこれまでの経験を踏まえ、SME Bankが実施した融資審査用フォーマットの改定についても助言等を行いました。こうした支援の結果、技術協力終了時に行ったアンケートの結果等を通じて、同行の融資審査に要する日数が約23%短縮されたことが確認されたほか、SME Bankの職員からは、「新規開業企業への評価に関して、より効果的な手法を確立することができた」、「調査項目が整理され、どのレベルの職員でも使いやすく、標準化された調査が可能となった」といった評価を受けました。マレーシア政府は、第9次マレーシア計画以降も引き続き中小企業等の発展に注力しています。直近では、2021年から2030年までの国家開発計画を盛り込んだ「Shared Prosperity Vision 2030(SPV2030)」において、「中小企業等によるGDPへの貢献割合を50%にする」といった目標が定められています。しかし、SPV2030が発表された翌年の2020年には、新型コロナウイルス感染症が流行し、マレーシアの中小企業等は大きな打撃を受けました。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う活動制限令によって、2020年に同国内の中小企業等が被った損失額は総額約407億リンギット(1兆2,210億円)とされており*5、また、SME Corp. Malaysia*6によれば、2020年1月から2021年7月までの間に国内の中小企業等の企業数が約7.3%減少したと報告されています*7。それに伴い、新型コロナウイルス感染症流行以前の2015年から2019年までは、マレーシアのGDPに対する中小企業等の貢献割合は上昇傾向にありましたが、2020年以降下落し、2021年時点では37.4%に留まっています(図表2)。新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の停滞を受け、マレーシア政府が経済対策として実施した総額5,300億リンギット(15兆9,000億円。2021年のGDP*8の約34.3%に相当)の支援プログラム(図表3)のうち、約2,700億リンギット(8兆1,000億円)が中小企業等の支援に充てられており、市中銀行が行った融資の返済猶予や賃金助成金の支給といった施策が実施されました。その後、2021年6月に発表された国家国民福祉経済回復パッケージ(PEMULIH)以降、追加の支援プログラムは発表されていません。しかし、2021年9月に発表された第12次マレーシア計画(2021-2025)において、イスマイル・サブリ首相は中小企業の復興を継続的に支援すると述べています。また、「経済の

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