ファイナンス 2022年9月号 No.682
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*1) 本稿の意見に係る部分は、全て執筆者の個人的見解であり、財務省及び財務総研の見解でない事をお断りする。また、紹介する経済データ等は、執筆*2) 1973年に設立された政策金融機関。その後、マレーシア開発銀行へと再編され、石油・ガス工業等のインフラ産業を対象に融資を行っている。*3) 1979年に設立された政策金融機関。海運業や製造業等の資本集約的な産業に対して融資を実施していた。*4) 1リンギットあたり30円で計算(2022年7月末時点の為替レートは、1リンギット=29.91円)。以下同様。時点での情報である。財務総合政策研究所 総務研究部 国際交流課 研究員 横山 日向子/同 上席研究員 金井 優洋/同 研究員 町田 孝陽/同 係員 岩嵜 智亮・財政金融統計月報の紹介財務総合政策研究所 資料情報部 資料情報編集室前室長 西村 吉弘/資料情報編集室前調査官 笹渕 崇雄・ 財務総研のマレーシア中小企業銀行への技術協力1. 財務総研によるマレーシア 中小企業銀行への技術協力財務総研はこれまで東南アジアの4ヵ国(ベトナム、マレーシア、ラオス及びミャンマー)に対して、中小企業の育成・発展の支援を目的とした、中小企業向けに資金を供給する政策金融機関への技術協力を行ってきました。実際の協力にあたっては、日本の中小企業向け政策金融についての知見を有する、日本政策金融公庫国民生活事業本部(日本公庫)と連携し、活動しています。今回のPRI Open Campusでは、マレーシア中小企業銀行(SME Bank)に対して行った技術協力に関して取り上げ、・ 技術協力の概要・  新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中でマレーシア政府が中小・零細企業や金融セクター向けに行った政策・  フォローアップでヒアリングしたマレーシアの中小企業の現況と今後の課題についてご紹介します*1。マレーシアの政策金融機関であるマレーシア中小企業銀行(SME Bank)が日本公庫の融資審査ノウハウについて関心を示したことをきっかけとして、2008年に財務総研は同行への技術協力を開始しました。SME Bankは、2005年にマレーシアインフラ開発銀行*2の中小企業融資部門とマレーシア工業技術銀行*3が統合して設立されたマレーシアの政策金融機関です。クアラルンプールにある本店のほか、マレーシア国内に26の拠点を有し、従業員数は約1,000名(2021年時点)、融資業務に加え、経営支援や信用保証等の事業を行っています。2020年12月時点で、同行の顧客企業数は約5,000社、融資総額は73億リンギット(2,190億円*4)となっています。顧客企業数の規模別の内訳では、小規模企業が最も多く全体の51.0%、次いで零細企業が36.9%、中規模企業が11.2%、大規模企業が0.9%となっています(以下、零細企業、小規模企業及び中規模企業をまとめて、中小企業等という。マレーシアにおける中小企業等の定義は、図表1)。業種別では、卸売業が27.1%、製造業が13.8%、建設業が8.8%、その他サービス業等が50.3%となっています。2008年当時、マレーシアでは、2006年から2010年にかけての経済開発計画である「第9次マレーシア計画」が進められており、国際競争力を高めるため、中小企業等の育成が課題の一つとされていました。具体的には同計画において、SME Bank等を通じて中小企業等の資金調達環境を改善することが示されており、同行は、より多くの資金ニーズに迅速に対応することが求められていました。財務総研が、2008年から2011年にかけて日本公庫と連携して実施したSME Bankへの技術協力は、 70 ファイナンス 2022 Sep.11・財務総研のマレーシア中小企業銀行への技術協力

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