ファイナンス 2022年9月号 No.682
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ドイツの政治、2021年の連邦議会選挙 ドイツと日本の関係ドイツと日本の交流は、1861年1月24日、江戸において当時のプロイセンとの間に修好通商条約が結ばれたことで始まりました。これ以降、日本とドイツの間で政治・経済をはじめとして幅広い分野で極めて緊密な関係を築いてきました。現在、ドイツは日本にとって欧州最大の貿易相手国であり、日本はドイツにとって中国に次ぐアジア第2位の貿易相手国となっています。*7) https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/index.html *8) https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html*9) https://www.jihk.de/attachments/jihk-p7152000628083407852-1-296654.pdfhttps://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.htmlファイナンス 2022 Sep. 53 海外在留邦人調査統計によればドイツには2021年10月現在で42,000人近くの日本人がドイツにおり、在留管理庁在留外国人統計によれば、2021年6月現在、日本には6,000人弱のドイツ人がいるそうです*7。ドイツに日本人が多い要因の1つは、ドイツが欧州のビジネスの拠点として選ばれているためであり、海外進出日系企業拠点数調査によれば、2020年10月現在、1900近い日系企業がドイツに立地しています*8。こうした企業の多くは実はあまりベルリンには立地していません。金融関係企業はフランクフルトに立地している場合が多いですし、その他の企業は、デュッセルドルフというドイツ西部の都市に多く立地しています。デュッセルドルフ商工会議所によれば、戦後日本で機械製造や重工業製品の需要が高まったことを受け、ルール工業地帯に近いといった利点から商社がデュッセルドルフに事務所を設置したことに端を発しているようです*9。前述の海外在留邦人数調査統計によると2020年10月時点でデュッセルドルフには7,000人余りの日本人か在留しているということで、全ドイツ在留日本人の2割弱がデュッセルドルフにいることになります。しかし、ドイツからの訪日客数は同じ欧州内でもイギリスやフランスに差をつけられており、私も大使館の一員としてさらなる貢献をしていきたいと思っています。ドイツは、16州からなる連邦共和制をとっています。国家元首は連邦大統領であり、立法府は連邦議会と、各州政府の代表により構成される連邦参議院からなります。連邦議会では、伝統的にキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)が二大政党でした。かつては、これら2つのいわば国民政党が、ほかの少数政党と連立を組み政権を運営することが、かつては多かったのですが、最近では、この二大政党の支持率は長期的に低下傾向にあり、2005年から4期16年続いたメルケル政権においては、2009年から2013年を除き、CDU/CSUとSPDが連立を組む、いわゆる大連立政権によって運営されました。二大政党の支持率低下は、その他の政党の支持の上昇とも見て取れます。市場経済を重視する自由民主党(FDP)や環境に対する意識の高まりを受けた緑の党(Grüne)が支持を伸ばしたほか、欧州同盟に対する反発等からドイツのための選択肢(AfD)も勢力を伸ばしました。現在のドイツ連邦議会では、これらに左派党を加えた6つの政党が議席の99%以上を占めています。私がドイツ大使館に着任した2021年には連邦議会議員の4年の任期が終わり、9月26日に連邦議会選挙が行われました。この選挙では、16年間首相を務めたメルケル首相が事前に政界引退を宣言し、ドイツ連邦共和国の歴史では初めて現職が出馬しない選挙となったこともあり、大変な注目を集める選挙となりました。2021年春頃から次期首相候補の名前とともに、各政党の支持率が注目を集め、選挙の行われた秋までの間の世論調査では、CDU/CSUやSPDだけではなく、緑の党が第一党となる時期もあるなど、連日メルケル首相の後継者に注目が集まりました。結果は、直近のメルケル政権で副首相兼財務大臣を務めたオラフ・ショルツ氏を首相候補として擁立したSPDがメルケル氏の所属するCDU/CSUを僅差で破りました。第3党には緑の党が躍進、第4党がFDPとなりました。ご存じの方もいるかもしれませんが、多くの場合、ド

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