ファイナンス 2022年9月号 No.682
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20212020(年)2019201820162017201520142013201220112010200920082007200620042005200320022001(出典)連邦統計庁20001999199820202021(年)20192017201820162015201420132012201120102009200820062007200520042003200220002001(出典)Eurostat199919989876543210月年42022(出典)連邦統計庁図表2 歳出/歳入(一般政府)の推移(億ユーロ)20,000図表3 物価上昇率(%)8.06.04.02.00.0▲2.0▲4.0▲6.0▲8.018,00016,00014,00012,00010,0008,00012345825637実質GDP成長率名目GDP成長率歳出歳入67202191011121す。これはドイツの外交・安全保障政策上の大転換であると称されますが、財政の観点からも、今回の1,000億ユーロの債務の返済原資及び基金払底後の資金の財源をどのように賄っていくのかなど大きな注目を集めています。図表1 GDP成長率(%)え、2022年春には見通しが大幅に修正され2022年の成長見通しは2.2%に引き下げられています。上述のインフレについては、ロシアの侵攻以前からドイツ経済においては大きな注目を浴びています。2021年は、前述の原材料不足に加え、2020年に行われた付加価値税の引き下げの終了に伴う反動増により、インフレ率は前年比3.1%(2021年12月の前年同月比は5.3%)となっていました。2021年中は多くの経済学者等もこのインフレ率は付加価値税引下げの反動増の効果の一巡などにより2022年以降は落ち着くとみていたのですが、実際には大方の予想を覆して上昇し、さらにロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰の影響も受け、2022年5月には前年同月比7.9%のインフレとなりました。6月、7月には、政府の取っている月額9ユーロで一部の遠距離交通(ICEなど)を除く公共交通機関乗り放題チケットの政策等の効果もあり、インフレ率はそれぞれ7.6%、7.5%と伸びが鈍化しましたが、引き続き高インフレが進行しており、今後の物価の動向に大きな注目が集まっています。続いてドイツの財政事情についてもご紹介します。ドイツでは、2009年の経済金融危機直後にドイツにおける憲法にあたる連邦基本法を改正し、連邦政府や州政府の財政収支を原則均衡(いわゆる債務ブレーキ)させることを義務付けました。堅調な経済状況も背景に、2014年から2019年までの間は歳入が歳出を上回ることとなり、連邦政府の新規国債発行額は0を維持しました。2020年以降は新型コロナウイルスの発生及び感染拡大に伴い、経済対策等を行うため、債務ブレーキの例外条項を用いることで国債発行を行ってきています。しかし、2022年7月に公表された2023年度連邦政府予算案では、再び債務ブレーキルールの原則に回帰することとされており、リントナー財務大臣は、「我々は、本日、財政再建を開始した。困難な環境の中で、安定志向の財政政策に戻りつつある。」とのコメントを発表しています。ドイツはロシアのウクライナ侵攻を受け、1,000億ユーロのドイツ連邦軍特別基金を設置することを決定しました。これは基本法を改正することで、先述の債務ブレーキルールの適用を受けない形で1度きりの債務発行を行うことで資金を確保することとしていま 52 ファイナンス 2022 Sep.

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