ファイナンス 2022年9月号 No.682
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5令和3年年央〜年末にかけての動向令和3年4月23日に緊急事態宣言が発出され、東京都等が再度緊急事態措置の対象となった。当初は、5月11日の解除を想定していたが、感染者数の増加が続いたことから、期間延長と緊急事態措置の対象区域の拡大が累次に渡り行われることとなった。6月にかけて新規感染者数が減少したことを受けて、沖縄県を除き6月後半に解除となったものの、感染力の強いデルタ株の伝播により感染再拡大が懸念されたことから、7月中旬以降、再度東京都等に緊急事態宣言が発令された。*32(図表6)国内の感染者数1日ごとの発表数(令和3年年央から年末)(出所)NHK「日本国内の感染者数(NHKまとめ)」25,00020,00015,00010,0005,000*32) 内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の実施状況に関する報告」 *33) 財務省「政府系金融機関による実質無利子・無担保融資の期限延長について」 *34) 財務省など「事業者の実情に応じた資金繰り支援等の徹底について(令和3年6月10日)」 *35) 経済産業省「新型コロナ対策資本性劣後ローンの貸付限度額引き上げについて」 *36) 財務省ほか「事業者の実情に応じた資金繰り支援等の徹底について(令和3年9月10日)」 (人)30,0007月8月https://corona.go.jp/news/pdf/houkoku_r031008.pdfhttps://www.mof.go.jp/policy/■nancial_system/■scal_■nance/torikumi/20210525_houdou.htmlhttps://www.mof.go.jp/policy/■nancial_system/■scal_■nance/torikumi/20210610_yousei.pdfhttps://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210608005/20210608005.htmlhttps://www.mof.go.jp/policy/■nancial_system/■scal_■nance/torikumi/20210910_yousei.pdf0国内の感染者数_1日ごとの発表数後方7日間移動平均9月10月11月2021年12月庁・経済産業省・財務省ほか関係省庁の大臣名で、官民金融機関に対して、緊急事態宣言下において影響を受ける事業者に対して柔軟に資金繰りに応じるよう要請文を発出した。*34さらに、宿泊業を中心とした、1事業者当たりの貸付金額が大きい業種の資金需要に対応できるよう、7月1日には、コロナ資本性劣後ローンについて、中小企業向けの貸付限度額を7.2億円から10億円に引き上げている。*35また、上述のとおり、日本公庫等の実質無利子・無担保融資は、令和2年の5月から6月に融資申込が殺到し融資実行のピークを迎えていた。その時期には、多くの借り手がまだ新型コロナが長期化することを予想していなかったため、例えば日本公庫の場合、まずは手元資金を確保するという観点から、6割以上の借り手が融資の元金返済の据置期間を1年以内に設定していた。そのため、その1年後にあたる令和3年6月頃に元金返済の据置期間が終了する事業者が多く生じることとなった。多くの事業者は約定通りに元金返済を開始している一方で、一部、約定通りの元金返済が難しく据置期間の延長等の条件変更を申し込む事業者も見られた。日本公庫等は、そのような事業者に対しては、据置期間の延長等の条件変更に柔軟に対応していった。8月中旬に入る頃には、デルタ株が猛威を振るい、1日あたりの新規感染者数が2万5,000人ほどまで増加することとなった。緊急事態宣言による行動制限と夏季の行楽シーズンのかき入れ時とが重なったことを受けて、特に飲食・宿泊や観光業といった業種を中心に需要が消失することとなり、資金繰りのさらなる悪化が懸念された。このことを受け、金融庁、経済産業省、財務省等は、9月10日に、あらためて関係大臣名で官民金融機関に対して資金繰り支援についての要請文を発出している。*369月中旬を超える頃には1日あたり数千人程度まで新規感染者数が減少したことから、9月28日には、9月30日を以て、緊急事態措置が終了することがアナウンスされた。この間、緊急事態宣言に伴う営業時間や酒類提供に対する制限、県境をまたいだ移動の制限により、飲食・宿泊業や公共交通といった業種を中心に、業況に影響を受けることとなった。日銀短観の資金繰り判断DIを見てみると、全体として、令和2年9月期に底を打ち、令和3年4-6月期には、総じて回復してきているものの、業種別推移で見ると、飲食宿泊サービスについては、他の業種に比べて回復が遅れている。このような状況を受け、政府は、5月25日に、「当面令和3年前半まで」とされていた日本公庫等による実質無利子・無担保融資の申込期限について、「当面年末まで」延長することを決定・公表した。*33あわせて、4月28日、5月12日、6月10日と累次に渡り、金融 40 ファイナンス 2022 Sep.

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