ファイナンス 2022年9月号 No.682
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1*29) 例えば、東京商工リサーチが令和3年6月に実施した債務の過剰感についてアンケート調査によれば、合計30%強が「過剰債務」状態にあると回答政投銀に飲食・宿泊部門専門チームを立上げ(商工中金は設置済)審査期間の短縮(原則1ヵ月程度に)政投銀・商工中金が単独での積極支援を可能とする。シニアローンによる資金繰り支援について万全を期しつつ、中長期の財務基盤増強のため、政【優先株式】配当水準を大幅に引下げ地域の公共交通機関などへの支援について、REVIC等政府系ファンド等の活用を検討(図表5)新型コロナの影響を特に受けている飲食・宿泊等の企業向けの金融支援等について(出所)令和3年3月23日開催「新型コロナに影響を受けた非正規雇用労働者等に対する緊急対策関係閣僚会議(第2回)」での配布資料より転載 新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について ①政府系金融機関による支援の強化新型コロナにより深刻な影響を受けた飲食・宿泊事業者等については、その影響が続く間、重点的な支援を行う(後述②も同じ)。(1) 民間協調融資原則の停止(2) 金利等の引下げ投銀・商工中金が提供する資本性資金の利便性を向上【劣後ローン】金利水準を当初3年間1%程度に引下げ(3) 体制の強化していた。https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210614_03.html*30) 内閣官房「成長戦略閣議決定(令和3年6月18日)」https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/index.html*31) 中小企業庁「中小企業に対する金融機関の伴走支援や早期の事業再生を後押しするための信用保証制度を開始します」 https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2021/210325hosyo.html(該当分野に対し国の支援強化)(政投銀が飲食・宿泊支援ファンドを月内目途に立上げ)(REVIC等が、債権買取・債務整理、出融資、ハンズオン支援等を実施)ファイナンス 2022 Sep. 39なされるなど、過剰債務への対応、事業再生・再構築に関する施策の検討が夏以降の重要な課題の1つとなっていった。*30また、年末に策定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」に記載された通り、3月31日に受付終了した民間金融機関を通じた実質無利子・無担保融資に代わり、4月1日より、金融機関による中小企業者に対する継続的な伴走支援などを条件に、信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げる「伴走支援型特別保証制度」が開始された。*31本制度は、中小企業の経営者が、ポストコロナ時代への対応を進め、売上高等を回復するために、金融機関などと相談をしながら、早期に経営改善の取組を進めることを後押しするものである。事業者支援の焦点は、当面の運転資金の確保から、前述した過剰債務への対応や売上・収益力の改善へと徐々に移っていった。任組合」を活用した優先株の引受実績は11件、金額にして575億円となっている。このように中堅・大企業に対する資本性資金の供給が強化される一方で、次の章で詳述されている通り、新型コロナの感染拡大が始まってから1年以上が経過し、コロナ特貸等の元金返済の据置期間が終了して返済を開始する事業者が増えていった。また、これまでの資金繰り支援や財務基盤の強化は事業者の事業継続に貢献した一方で、事業者の債務は結果的に増えていったこともあり、一部の事業者について、積み上がった債務返済の負担が過重となり完済の目処が多立たなくなってしまう、いわゆる過剰債務問題が新たな政策課題として認識されることとなった。*29同年6月18日に閣議決定された「成長戦略実行計画」においても、「中小企業の実態を踏まえた事業再生のための私的整理等のガイドラインの策定について検討する。」という記載が

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