ファイナンス 2022年9月号 No.682
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4令和3年初頭〜年央にかけての動向上述のとおり、新規感染者数は令和2年11月あたりから増加し始めていたが、年末が近づくにつれ、更に急激なスピードで増加していった。年末年始の感染拡大防止に最大限の対策を講じる観点から、GoToキャンペーンの一時停止や、各都道府県において感染状況等を踏まえて行われている営業時間短縮の要請等の措置を講じたことや、令和3年1月7日には緊急事態宣言が1都3県に対して発出されたこともあり、回復傾向にあった経済活動にも大きな影響が及ぶこととなった。(図表4)国内の感染者数1日ごとの発表数(令和3年初頭から年央)*23) 内閣府「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html(出所)NHK「日本国内の感染者数(NHKまとめ)」(人)10,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000国内の感染者数_1日ごとの発表数後方7日間移動平均1月2月3月2021年4月5月6月 新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について ファイナンス 2022 Sep. 37ば、新事業やビジネスモデルの転換、DXの推進といった前向きな投資、新型コロナの影響を受けた事業者の経営改善や事業再生等への対応など、ポストコロナへの移行を見据えた上で必要な分野へ政策的にどう対応していくか、政府として道筋を示す必要があった。こうした中、令和2年12月8日、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」が決定・公表され*23、資金繰り支援については、以下の取組みを行うことが明記された。(総合経済対策)・民間金融機関を通じた実質無利子・無担保融資を令和3年3月まで実施する。・日本公庫等による実質無利子・無担保融資を、感染状況や資金繰りの状況を踏まえ、当面令和3年前半まで継続する。・中小・小規模事業者等の経営改善や業態転換等に伴う資金繰りを支援する。同対策の趣旨として、これまでの新型コロナ対策としての資金繰り支援を延長し、依然苦境にある事業者に対する支援を継続することに加え、前向きな投資等を促す新制度の創設、事業再生及び事業承継・M&Aを後押しする貸付制度を拡充することにより、ポストコロナも見据えた多様な資金需要への対応に万全を期すことが企図された。同対策を受けて、令和2年度第3次補正予算が、12月15日に閣議決定、令和3年1月28日に国会審議を経て成立することとなった。同予算の成立に伴い、追加的な予算措置がなされるとともに、足下の新型コロナや経済の状況、日本公庫等の融資実績等を踏まえて実態に即した資金繰り支援体系の整理が行われ、強力な新型コロナ対策の金融支援の供与を引き続き推し進めることとなった。また、上記のような、ポストコロナを見据えた政府としての検討を反映し、政策金融の分野においては、・政投銀の特定投資業務の一環として、「グリーン投資促進ファンド」を設置する・トランジションファイナンスの促進のため、ツーステップローン及び成果連動型利子補給制度を産業競争力強化法において創設するといった施策が講じられるなど、グリーン社会の実現に向けた取組みへの支援も、経済対策、補正予算において強化されていった。上記のような感染状況の悪化とそれに伴う政府の感染拡大防止策により、事業者に影響が及ぶと想定されたところ、事業者の資金繰りに万全を期すべく、金融庁・経済産業省・財務省ほか関係省庁の大臣名で、官民の関係金融機関に対して要請文を累次にわたって発出するとともに、以下のような追加的な支援策を講じた。・日本公庫等によるコロナ特貸に係る実質無利子化及び金利引下げ限度額の更なる拡充(日本公庫国民事業は4,000万円から6,000万円に、日本公庫中小事業は2億円から3億円に拡充)・コロナ特貸の申込要件の一つである売上減少要件の緩和(前年等の同時期と比較する直近の売上の期間

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