ファイナンス 2022年9月号 No.682
39/94

3令和2年年央〜年末にかけての動向令和2年年央に向け、1日当たりの感染者数が40人程度となり、令和2年5月25日に緊急事態宣言が解除された。しかし、7月から8月にかけて感染は再び急拡大し、8月7日には1日当たりの感染者数が1,600人程度まで増加することとなった。(出所)NHK「日本国内の感染者数(NHKまとめ)」国内の感染者数_1日ごとの発表数後方7日間移動平均7月8月9月2020年10月11月12月 新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について *17) 過去の危機対応を振り返ると、今般の新型コロナ対策の金融支援の事業規模の大きさが過去に類を見ないものであることがわかる。複数年度にわたる断続的な補正予算措置等によるため単純にその際の対策(事業規模)を比較することは出来ないものの、例えば、新型コロナ対策として、令和2年度第1次及び第2次補正予算にて措置された信用補完制度等による資金繰り支援の事業規模は52.5兆円である一方で、世界金融危機(リーマンショック)時及び東日本大震災時における信用補完制度による資金繰り支援の事業規模は、前者が36.3兆円、後者が10兆円であった。*18) 元本の満期一括返済、法的倒産時に劣後する弁済順位、擬似配当的な金利設定により、金融機関の資産査定上、自己資本と見なすことのできる融資商品。資本性劣後ローンの活用により事業者の財務基盤の強化や民間金融機関による協調融資の促進といった効果が期待される。*19) 貸付限度額と金利引き下げ限度額の関係について、具体例を用いて説明すると、例えば国民事業に融資申込をした事業者は制度上、この時点では、8,000万円まで融資を申し込むことができる。この8,000万円のうち、4,000万円は当初3年間について基準金利から▲0.9%の金利引き下げの対象となる(実質無利子化の要件を満たす場合は、中小機構の利子補給により実質無利子)。残りの4,000万円については、約定期間を通して基準金利が適用されることとなる。なお、貸付限度額はあくまで制度の限度額であり、実際の融資金額は融資審査を通して個別に決定されることとなる。ファイナンス 2022 Sep. 35化があったことがうかがえる。また、まだ新型コロナの特性に係る情報が限られていた令和2年春頃にあっては、新型コロナはインフルエンザ等と同様に高温多湿の環境下に弱く、夏に近づけば感染は終息するのではないか、という見方も報道を中心に一部にあったものの、結果として、そのような期待に反して、新型コロナの感染は長期化することとなった。(図表2)国内の感染者数1日ごとの発表数(令和2年年央から年末)(人)5,0004,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000新型コロナの影響が長期化する可能性も含め、引き続き事業者の資金繰り需要が拡大することが想定されたことから、政府は、7月1日に、コロナ特貸等について、貸付限度額の引上げ及び金利引下げ限度額の拡充を行っている。具体的には、貸付限度額について、日本公庫国民生活事業(以下「国民事業」という。)の場合は6,000万円から8,000万円に、日本公庫中小企業事業(以下「中小事業」という。)の場合は3億円から6億円に引き上げるとともに、実質無利子化及び金利引下げの限度額についても、国民事業の場合は3,000万円から4,000万円、中小事業の場合は1億円から2億円に拡充されることとなった。*19また、8月3日には、先述の第2次補正予算に盛り込まれた施策である、日本公庫等による中小・小規模事業者向けの新型コロナ対策資本性劣後ローン(以下、「コロナ資本性劣後ローン」という。)の取扱いがる資金繰りにとどまらず、新型コロナからのV字回復への追加的な資金需要、休業要請等により毀損する財務の健全性への対処等が、新たな事業者の課題として認識されるようになり、政策金融による資本性資金の供給の必要性が議論されるようになった。このような議論を受け、第1次補正予算の成立から間髪入れることなく編成された第2次補正予算において、実質無利子・無担保融資等の融資枠の大幅拡充に加え、政府系金融機関による資本性劣後ローンの創設といった資本性資金による支援が盛り込まれた。同予算の成立(6月12日)とこれまでの予算措置により、新型コロナ対策として官民金融機関が供与できる金融支援の規模(事業規模)は、総額140兆円ほどというかつて類を見ないものとなった。*17(第2次補正予算)・日本公庫等による実質無利子・無担保融資等や政投銀等による危機対応融資の融資枠を拡充・政投銀・商工中金(中堅・大企業向け)、日本公庫等・商工中金(中小・小規模向け)の資本性劣後ローンを創設*18・政投銀の特定投資業務、産業革新投資機構、地域経済活性化支援機構等による出資・ファンドを介した支援等を拡充 等緊急事態宣言が解除された5月25日の1日当たり感染者数が21人であったことと比べると、3ヶ月の間に76倍に規模が増加したことになり、急激な状況変

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る