ファイナンス 2022年9月号 No.682
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2令和2年初頭〜年央の動向 (本誌令和2年8月号の振り返り)過去2年の制度の変遷に触れていくことに先立って、新型コロナの感染拡大が始まった当時の政府の初動について簡単に振り返りたい。なお、当時の経緯や施策内容については、上述のとおり、本誌令和2年8月号に詳しいところであり、そちらも参照されたい。 新型コロナ感染症対策に係る資金繰り支援について *4) 本稿の執筆に当たっては、政府系金融機関、関係省庁、財務省政策金融課の関係者の方々に多くのアドバイスをいただいた。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。*5) 日本政策金融公庫「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」の設置についてhttps://www.jfc.go.jp/n/info/pdf/topics_200129a.pdf なお、沖縄振興開発金融公庫における経営相談窓口設置は、1月27日となっている。2月14日には特別相談窓口を設置し、セーフティネット貸付の貸付要件から売上高の減少等の要件を撤廃している。https://www.dbj.jp/topics/dbj_news/2019/html/20200130_79834.html*6) 日本政策投資銀行「新型コロナウイルス感染症の影響に関する経営相談窓口の設置について」 *7) 新型コロナウイルス感染症対策本部「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」 *8) セーフティネット貸付は、社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に業況悪化を来している中小企業者を対象とした貸付制度であるが、その貸付要件として、一定の売上減少要件などが設定されている。当該要件緩和は、売上減少要件等の充足如何に関わらず、新型コロナの影響により資金繰りに著しい支障をきたしていること又はきたすおそれのある事業者も貸付の対象とするものである。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kinkyutaiou_corona.pdf*9) 衛生環境激変対策特別貸付は、かつて平成8年(1996年)に発生した、腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒事件をきっかけに、当時の環境衛生金融公庫において創設されたもので、現在の日本公庫(国民生活事業)に承継されている特別貸付制度である。これまでにも平成21年の新型インフルエンザの際などにおいても発動された実績があった。*10) 経済産業省「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口で土日祝日も相談を受け付けます」 https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228010/20200228010.htmlファイナンス 2022 Sep. 33場合、それらは執筆陣の責に帰するものであることをご承知おきいただきたい。*4令和2年1月16日に最初の新型コロナの国内感染が確認されて以来、政府においては、新型コロナの影響による需要減により経済活動が急速に縮小する中で、事業の継続と雇用の維持が困難になることを防ぐため、未だ危機の規模が不明であった1月末から、企業支援策を迅速に打ち出すとともに、累次にわたり強化してきた。政策金融においては、最初の国内感染が確認された直後の令和2年1月29日に日本公庫において「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置するとともに*5、翌30日には、政投銀においても「新型コロナウイルス感染症の影響に関する経営相談窓口」を設置し*6、新型コロナの感染の拡大に伴う事業者の資金繰りニーズに応えられる枠組みを整えた。当時は、新型コロナがどのような性質の感染症であるかまだ見当がついていなかったため、まずは一般的な相談体制の整備から着手した。2月に入ると、国内の感染が徐々に各地域において拡大し、政府が大規模イベントの中止、延期または規模縮小等の対応を要請するなど、新型コロナが、国民生活に対して直接影響を与える問題として、日本社会に急速に認識され始めた。2月13日に、政府は「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」第1弾を決定・公表し、日本公庫等において、影響を受ける事業者に対する融資枠の確保や貸付制度の要件緩和等を行った。*7具体的には、以下の施策が採られた。(緊急対応策第1弾)・中小企業等の資金繰り支援として、日本公庫等に緊急貸付・保証枠5,000億円を確保・売上高の減少等の程度に関わらず、セーフティネット貸付の対象とするよう、要件を緩和*8当時の政策金融による資金繰り支援は、上記のセーフティネット貸付に加え、旅館、飲食店及び喫茶店という、特に新型コロナの感染拡大により影響を受けるおそれのある業種を対象に、衛生環境激変対策特別貸付を発動するなど、まずは、既存制度を活用して可能な限り迅速な初期対応に努めるものだった(当時、後述の新型コロナウイルス感染症特別貸付等の新型コロナに対応した貸付制度は制度検討中であった)。*9あわせて、日本公庫等の政府系金融機関や信用保証協会等では、相談・融資体制の強化のために、新型コロナの感染拡大当初から、事業者の急な資金繰り需要にも対応できるよう、週末においても相談窓口を開き電話相談に対応することとした。*103月に入り、感染者数の増加が更に加速するにつれて、このような既存制度の活用による初期対応に次第に限界が見え、政府としても新たな対応の必要性を認識することとなった。このような状況を踏まえ、政府は、予備費の使用を含め、一層踏み込んだ新型コロナ対応を行うこととし、3月10日に、緊急対応策第2弾を決定・公表した。具体的には、予備費を活用して、新型コロナの影響を受

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