ファイナンス 2022年9月号 No.682
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*6) 公文書管理委員会は、国民共有の知的資源である公文書等の適切な管理に関して、専門的・第三者的な見地から調査審議を行うため、2010年6月28日に内閣府に設置されたもの。同委員会は、公文書管理法に規定された権限に関する事務を行うこととされている。具体的には、特定歴史公文書等の利用請求に係る審査請求(第21条第4項)、政令の制定又は改廃(第29条第1号)、行政文書管理規則(同条第2号)、特定歴史公文書等の廃棄(同条第2号)、利用等規則(同条第2号)、公文書等の管理について改善すべき旨の勧告(同条第3号)について調査審議を行い、内閣総理大臣等に対し答申を行う。*4) https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/densi/kihonntekihousin.pdf*5) 村上耕司(内閣府公文書監察室参事官補佐)「行政文書の電子的管理における文書管理の効率化の試みー働き方改革を契機にー」(国立公文書館「アーカイブズ」第74号(2019年11月29日))。なお、この論考で、村上氏は、「文書管理と行政事務の効率化の歴史」を考察し、「文書管理と業務効率化は古くから意識され、ときに互いに緊張関係をはらみつつも、ときにはマネージメントの手段として位置付けられ、情報公開制度の議論の発展とともに、文書管理の意義について再認識されてきたということがいえるだろう」と指摘している。また、臨時行政調査会の「行政改革に関する第5次答申−最終答申−」について」(昭和58年3月18日閣議報告)が、情報化社会の黎明期の中で、「文書等管理の問題は,単に事務処理上の問題にとどまらず,情報の有効利用の観点からより総合的な改善方策を検討する必要に迫られている。」、「情報管理の理念を従来の保管・保存のための管理から有効な利用・提供を図るという方向へ転換する。」としていたことに言及があり、示唆深い。https://www.archives.go.jp/publication/archives/no074/9171 財務省における公文書の電子的管理の取組等について ファイナンス 2022 Sep. 25PDCAサイクルの確立、政府全体で共通・一貫した文書管理、文書管理の実務を根底から立て直し、政府CROによるチェックと各府省CROによるガバナンス、人事評価への的確な反映と懲戒処分の明確化があげられた。この中の「公文書管理の適正を確保するための取組」の中で、「財務省、防衛省においては、それぞれの省において発生した事案の調査結果を踏まえて定めた再発防止策を着実に実行することが重要である」とし、財務省については再発防止策を着実に進めることについて特に名指して記載がなされている。また、「3.(2)行政文書をより体系的・効率的に管理するための電子的な行政文書管理の充実」では、「一連の公文書をめぐる問題において、不存在と決定された行政文書が後刻発見される事案が発生する等、行政文書の確実な所在把握が課題となっている。行政文書を電子的に管理することにより、体系的・効率的な管理を進めることで、行政文書の所在把握、履歴管理や探索を容易にするとともに、職員一人ひとりにとって文書管理に関する業務の効率的運営の支援につながり、ひいては文書管理の質の向上をもたらすことが期待される。まずは現在電子化されている行政文書の効率的な管理を進めるため、電子的な行政文書の所在情報把握ができる仕組みを構築する。さらに作成から保存、廃棄・移管まで一貫して電子的に管理する仕組みについても検討する」としていた。これを踏まえて、「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」が2019年3月25日に内閣総理大臣決定され*4、従来の方針を大きく転換し、電子媒体を正本・原本とする原則を打ち出し、新たな国立公文書館の開館時期(2026年度)を目途として本格的な電子的管理に移行することとされた。具体的には、「その中では、利便性・効率性と機密保持・改ざん防止のバランスを確保しつつ、プロセス全体を電子化することとされ、手作業を自動処理化して確実・効果的に管理可能な枠組みを構築することが理念として示されている。これを受け、メタデータの管理や移管・廃棄の電子上での実施などを自動化・システム化する枠組みを構築することとし、業務フローや仕様の標準例を具体化することとなっている。これは、電子的管理を機に、文書管理の効率化と適正化を一体的に進める取組であり、文書管理と業務の適切な遂行を両立させる極めて重要な試みといえるだろう。」*5と指摘される極めて重要な文書である。財務省においても、この「基本的な方針」を踏まえて、行政文書の電子的管理の検討が鋭意進められてきた(後掲2.参照)。2021年4月には公文書管理委員会*6の下にデジタルワーキング・グループ(WG)が設置された。WGは3回開催され、幅広い論点について専門的かつ集中的な議論を行い、7月に「デジタル時代の公文書管理について」の報告書(WG報告書)がまとめられた。WG報告書は、同年7月26日に開催された公文書管理委員会で報告され、議論が行われるとともに、小幡純子委員長から「政府におかれましても、ワーキングの取りまとめ結果や委員会の意見も踏まえまして、制度の見直しやシステムの構築を進めていただきたい」との要望がなされた。(2) 「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」(内閣総理大臣決定)(3) 「デジタル時代の公文書管理について」の報告書(WG報告書)

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