ファイナンス 2022年9月号 No.682
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*21) 2022年3月末までは、基準応札係数は「それぞれの入札における発行予定額のうち、各特別参加者の価格競争入札及び第I非価格競争入札又は利回*22) 具体的には「第II非価格競争入札の上限を10%から15%に戻すこともあわせて検討してほしい。」(第86回国債市場特別参加者会合(2020年4月2日開催))、「入札のプレゼンスが増えている中で、海外投資家からの平均落札価格でのオーダーが増えており、注文執行に国債市場特別参加者として難しさを感じている。この現状に対処するために、第I非価格競争入札を国債市場特別参加者1社につき1%分増やすことが望ましいと考える。」(第92回国債市場特別参加者会合(2020年12月11日開催))、「コロナ以降に在宅の顧客が増えたため、セカンダリーでの売買が減っていることに加えて、海外投資家のプレゼンスは上がっており、入札の重要性は増えており、特にアベレージオーダーのニーズが増えているように思われる。そういった中で、当社では、第I非価格競争入札の増額を希望する。」(第95回国債市場特別参加者会合(2021年9月28日開催))、「国債市場特別参加者数が減少傾向にある中、応札責任割合の変更によって国債市場特別参加者の負担増が想定される。従って、第I非価格競争入札の増額と言った措置を検討してもらうことを要望する。」(第98回国債市場特別参加者会合(2022年3月22日開催))といった声が上がっています。り競争入札の応札額が占める割合を、当該直近2四半期分について単純平均したものから5%を減じた値」という定義でした。過去には、応札責任割合をPDの数の分だけ合計した「応札責任による発行予定額のカバー率」は、100%に満たないことがありました。これは、理屈上は、極端に国債の需要が乏しい場合には、制度上「札割れ」が生じうることを意味していました。また、各PDの第I非価格競争入札の枠(応札上限)などは、PDの数に応じて増減しうる一方、PDの各入札における責任の重さは、PDの数に依らず固定されているものでもありました。こうし(2) 当該国債の発行予定額×各PDの基準応札係数*21(3) (同日午前の同じ国債の)各PDの価格競争入札+第I非価格競争入札による落札額(ただし利回り競争入札の場合はその落札額)の合計額の10%(=当日の落札実績)(=直近2四半期中の応札実績)このように2つの軸で評価されていますが、(3)についてはいわば当日の価格競争入札に対して積極的に参加することに対してインセンティブを与えている仕組みと解されます。(2)だけであれば、直近2四半期中の応札額に基づき定められるため、当日落札しなくても第II非価格競争入札に参加できるということになります。他方、(3)は当日どの程度落札できたかを意味しますから、(2)と(3)の小さい方をPDに与えられる第II非価格競争入札の枠とすることにより仮に過去積極的に応札していたとしても、当日全く落札しなかった場合、枠が与えられないということになります。したがって、金額の枠はあくまで過去の応札額にも依存する形をとりつつ((2))、当日のオークションにおいてしっかりと落札していないと、第II非価格競争入札に参加することができない((3))というインセンティブが付されているとも解釈できます。なお、実際の入札においては、投資家がPDを経由せずに直接落札することもあるため、第II非価格競争入札については、PDが行使できる枠を合計しても、発行予定額の10%を下回る可能性がある点に注意が必要です。近年、アベレージ注文のニーズが高まっているというPDからの指摘があります。発行当局とPDは、PD会合で定期的に意見交換をしていますが、PDサイドから度々アベレージ注文のニーズの高まりについて議論が上がっています*22。その一つの理由として、国債発行額が増加する中で、海外投資家のプレゼンスも拡大していることが指摘できます(米国では、全員同じ価格で購入するダッチ方式がとられていることが影響しているのかもしれません)。前述のとおり、非価格競争入札は、平均価格で購入したいという投資家の需要に対応した措置とも考えられるので、アベレージ注文を受けうるPDのニーズに対応していると捉えることもできます。第I非価格競争入札と第II非価格競争入札を合計すると発行量の30%程度になり、発行量の30%程度が既にアベレージ注文に配慮していると解釈できるかもしれません。この割合は、欧州主要国と概ね同程度になりますが(米国ではダッチ方式を利用しているがゆえ、そもそも我が国や欧州のような非価格競争入札が存在していません)、各国における非価格競争入札については次回の論文で詳細に説明します。BOX 2 2022年のPD制度の改正2022年3月末に、PD要領が改訂され、各PDに課せられる応札責任の内容に変更が加えられました。具体的には、それまでは各入札において発行予定額の5%以上の応札を行うことが要領上定められていたところ、改訂後は発行予定額の「100÷PDの数(n)」%以上の応札が求められることになりました。 22 ファイナンス 2022 Sep.4.3  近年のアベレージ注文に対する需要の高まり

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