ファイナンス 2022年9月号 No.682
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𝑖 ∑𝑗国債𝑗のデュレーション× PD𝑖による国債𝑗の落札額∑𝑘∑𝑗国債𝑗のデュレーション× 基準落札係数𝑖=PD𝑘による国債𝑗の落札額(注)国債𝑗の落札額とは「競争入札」の落札額に限る。非価格競争入札入門*17) ここで、「基準落札係数」とは、前2四半期の落札実績に基づいて算出される係数であり、四半期ごとに特別参加者に通知されます。具体的には、それぞれの年限についての各特別参加者の落札総額(競争入札の落札総額に限る)に、財務省が公表するデュレーションを乗じて得た値(以下「デュレーション換算値」という)の合計値が、すべての特別参加者の落札総額のデュレーション換算値の合計値に占める割合(百分率で小数点以下第2位未満を四捨五入して表示したもの)を表しています。*18) PD要領によると、デュレーション換算値の算出では、「競争入札」の落札額に限定されています。*19) 直近のデュレーション換算に用いる指数は下記の通り公表されています。 *20) 正確には「当該国債の発行予定額に各特別参加者ごとの基準応札係数を乗じて得た額(1億円未満は切り捨て)、又は各特別参加者の価格競争入札及び第I非価格競争入札による落札額の合計額(ただし、利回り競争入札の場合はその落札額)の10%に相当する額(1億円未満は切り捨て)のいずれか少ない額」とされています。すなわち、第II非価格競争入札における発行限度額は、実質的に、発行予定額の10%となっています。また、ここで使用された「基準応札係数」とは、前2四半期の応札実績に基づいて、各年限ごとに算出される係数であり、四半期ごとに特別参加者に通知されます。具体的には、前2四半期の入札について、それぞれの入札における発行予定額のうち、各特別参加者の価格競争入札及び第I非価格競争入札又は利回り競争入札の応札額(財務省が、相応な価格でないと判断したものを除く。)が占める割合(百分率で小数点以下第2位未満を切り上げて表示したもの)を、当該直近2四半期分について単純平均(百分率で小数点以下第2位未満を切り上げて表示したもの)した値を指します。https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/press_release/20220401duration.pdfファイナンス 2022 Sep. 21なお、こうした制度に関する詳細は、「国債市場特別参加者制度運営基本要領(PD要領)」に規定されています。前述の通り、第I非価格競争入札及び第II非価格競争入札については、それぞれPDごとに応札限度額が定められています。第I非価格競争入札の枠は、(1) 第I非価格競争入札による発行限度額×各PDの基準落札係数(=直近2四半期中の落札実績)という式で定まります。「第I非価格競争入札による発行限度額」とは、現在、当該国債の発行予定額の20%に相当します。また、基準落札係数はPDごとに計算しますが、下記の通り、各PDを合計すると100%になります(𝑖はPDを示す添え字です)。∑基準落札係数𝑖=1基準落札係数は直近2四半期中の落札実績に基づいて決められており、直近2四半期中において積極的に(応札ではなくて)「落札」したPDに、より多くの第I非価格競争入札の枠が付与されるという仕組みがとられています*17。国債発行額の20%について第I非価格競争入札で発行されうるところ、直近2四半期中の落札実績に基づき、PD内でその権利を配分するというイメージです。また、基準落札係数はデュレーションで調整された値になります。具体的には、各PDの基準落札係数は、となります(ここでのΣについては、直近2四半期中の合計である点に注意してください。PD要領では、デュレーション×落札総額を「デュレーション換算値」と呼んでいます。また、𝑗は国債の年限を示す添え字、𝑘はPDを示す添え字です)。このようにデュレーションを掛け合わせることで、デュレーションが長い国債の落札にウェイトが置かれていることになります。例えば、あるPDが2年国債と10年国債をそれぞれ1億円ずつ落札したとしても、10年国債の落札の方が5倍程度、基準落札係数への影響が大きいと解釈されます。これに伴い、結果として競争入札*18において、デュレーションが長い、すなわち金利感応度が大きい国債を落札することに対してより大きなインセンティブが与えられているように見えるかも知れません。これは業者からすると、長い年限の国債の方が金利リスクに関するリスク・テイキングが大きいため、金利リスク量で入札への貢献度を計測しているものと解釈できます。なお、デュレーション換算に用いる指数については財務省のウェブサイトで公表されています*19。デュレーションとは、ファイナンスで用いられる代表的な金利リスク指標になりますが、そのリスク量はおおよそ国債の年限で近似することができます。詳細は「金利リスク入門」(服部, 2020)を参照してください。他方、第II非価格競争入札における各PDの応札限度額は、下記の2つの小さい方で定められます*20。4.2 非価格競争入札における応札限度額第I非価格競争入札の応札限度額第II非価格競争入札の応札限度額

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