ファイナンス 2022年9月号 No.682
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価格競争入札発行予定額価格競争入札発行予定額図表3 非価格競争入札と価格競争入札の関係非価格競争入札入門2・5・10年国債価格競争入札は発行予定額から第Ⅰ非と非競争の落札額を引いた第Ⅰ非価格競争入札非競争入札Max 20%Max 10%Min 70%残り第Ⅰ非価格競争入札20・30年国債価格競争入札は発行予定額から第Ⅰ非の落札額を引いた残りMin 80%Max 20% *9) 第70回国債市場特別参加者会合(2017年3月22日開催)議事要旨によると、PDから「『最近、顧客による入札の平均価格での購入ニーズが高くなり、第I非価格競争入札で確保できる量では賄えなくなっている』ため、発行限度額を引き上げて欲しいという声があがっている」ことが、制度変更の背景であると述べられています。*10) ここでは発行予定額を同一と仮定しています。*11) ここでの落札額とは、PDごとに算出されるものであり、各PDの(同日午前に実施される同じ国債についての)価格競争入札と第I非価格競争入札による落札額の合計額を表しています。*12) 第24回国債市場特別参加者会合(2008年12月12日開催)議事要旨によると、第II非価格競争入札については「競争入札後の市況によって需要が大きく異なるが、直近1年間の実績をみると、応募があったケースでは、その9割以上で限度額一杯の応募があった」と説明されており、こうした需要を踏まえ、第II非価格競争入札に関する応募限度額を引き上げたい旨が述べられています。*13) 第84回国債市場特別参加者会合(2019年12月12日開催)議事要旨を参照。ファイナンス 2022 Sep. 17札は80%以上をカバーすることになります。このように発行予定額は安定していますが、価格競争入札により発行される金額は、非価格競争入札及び非競争入札におけるオプションがどの程度行使されるかどうかで変動しうる点に注意が必要です(発行予定額の70-100%の範囲で変動します)。一方、第II非価格競争入札は、価格競争入札後の市場動向等によっては、全額行使されることもあれば全く行使されないこともあります。第II非価格競争入札の落札額は、その全額が、都度の入札における「発行予定額」の外数です。国債発行計画では第II非価格競争入札分としてカレンダーベース市中発行額の5.5%(令和4年度当初計画の例)が計上されていますが、第II非価格競争入札を行った日の後場の動向次第では、年度を通した調達額が計上額を上回る可能性もあります。そして、多く調達した部分の中には前倒債として積み上がるものもあります(前倒債については服部・稲田(2020)を参照してください)。なお、国債発行計画との関係についてはBOX 1で説明を行います。非価格競争入札は、前述のとおり、PDに与えられる権利であり、現在の国債市場特別参加者(PD)制度とともに導入されました。第II非価格競争入札は、PD制度が導入されたタイミングである2004年10月に開始され、第I非価格競争入札は2005年4月に開始されています。2004年にPD制度が導入されて以来、第I非価格競争入札及び第II非価格競争入札共に、限度額に関して変更が行われています。第I非価格競争入札については、その発行限度額が拡大傾向にあります。具体的には、発行限度額は、当初「発行予定額の10%」でしたが、市場参加者のニーズを考慮し*9、2017年7月に「同20%」へ引き上げられ、第I非価格競争入札で使える枠が2倍*10に拡大しました。第II非価格競争入札についても2009年に、第II非価格競争入札の旺盛な応募状況に鑑み、応札限度額が「落札額の10%*11」から「落札額の15%」に引上げられました*12。2020年1月には、「前倒債の増加を抑制する施策」の一環から*13、第II非価格競争入札の応札限度額は「落札額の10%」へと引き下げられました。また、2020年4月には、物価連動国債の第II非価格競争入札を取りやめています。2.5 非価格競争入札にかかる制度の変遷

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