ファイナンス 2022年8月号 No.681
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過去の「PRI Open Campus」については、 財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.htmlPOLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPAN執筆者(代表)プロフィール前主任研究官 曽我 奈津子2009年4月に東京税関に入関。これまで主に財務省関税局で国際交渉や税関行政の企画立案等の業務に従事してきました。2020年7月から2022年6月まで財務総研で勤務していました。ファイナンス 2022 Aug. 55PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 10財務総合政策研究所3. 戦略的な開発資金調達に向けたマクロ経済の長期フレームワークついて1. PFMのデジタル化に関する国際的な取組みについて2.カンボジア3.モンゴルや世界銀行などの国際機関は、INFFを進めるための支援を積極的に行っており、持続可能な開発を達成できる方法の経験やイノベーションを共有することが望ましいことを指摘しました。Dora Benedek氏(IMF財政局副部門長)は、SDGsに関連する政策の評価に使える長期マクロ経済フレームワークについて説明しました。特にIMFが今回調査対象とした4つの低所得国では、新型コロナウイルスの発生によって、従来通りの目標を2030年までに達成するためには、多額の追加支出が必要であり、特に人的資本とインフラへの投資を行い、改善することの重要性、さらなるドナーからの支援の必要性が指摘されました。Moritz Piatti氏(世界銀行シニアエコノミスト)は、PFMのデジタル化には、効率性を高め、説明責任と透明性を促進し、危機の時代に必要なサービスの継続性を確保するための多くの可能性を秘めていると述べました。一方で、各国は、デジタル化に対する投資を増やしているが、デジタル化とPFMの関係は非常に複雑であり、多くの要因が互いにどのように影響し合っているかを理解する必要があることを強調しました。セッション4:政府活動のデジタル化このセッションでは、公的な収入・支出等の財政に関する仕組みの管理(Public Financial Management)の効率性と透明性を高めるために、公共サービスの提供方法を改善し、歳入管理を強化するためのPFMのデジタル化に関する国際的な取組みやカンボジア及びモンゴルの取組みについての紹介が行われました。Maun Prathna氏(カンボジア経済財政省事務局次長兼FMISプロジェクトマネジメント常任副議長)は、カンボジアにおける予算の企画・立案及び執行のデジタル化をはじめとするFMIS(Financial Management Information System)についての近年の取組み、システム利用の利点、今後の課題について説明しました。FMISプロジェクトは、透明性や説明責任向上、業務に要する時間の効率化に資することが期待される一方で、人材育成や関係者間での共通認識の形成が課題となることが強調されました。Baatarsuren Batsaikhan氏(モンゴル国税庁リスクマネジメント部部門長)は、モンゴル国税当局におけるデジタル化によるデータ活用について紹介しました。従来、モンゴル国税当局には複数の独立したシステムがあり、データベース構造は分散していましたが、ADBから支援を受け、ORACLEやClouderaといった機械学習やAI分析ツールを導入した結果、税務調査や税務評価に関するデータ処理や分析の時間を大幅に短縮することができ、また過少申告の追跡が容易になり、税収が増加したとの説明がありました。また、Neo4Jを用いた高速なビッグデータ分析により、1万人の納税者間の相関関係について20~30秒間で分析が可能となったとの報告がありました。今回のTFFセミナーのアジェンダおよび発表資料は、財務総研のウェブサイト(https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/tff2022.html)に掲載されていますので、ご参照ください。

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