ファイナンス 2022年8月号 No.681
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*3) Valerie C., Barry E., Asmaa E.G., and Martin S.(2021)“How to Achieve Inclusive Growth” https://global.oup.com/academic/product/how-to-achieve-inclusive-growth-9780192846938?cc=jp&lang=en&1.日本における取組みについて2.マレーシアにおける取組みについて1.包摂的な成長を実現する方法について2. アジアにおける国家財政の統合的な枠組みについてセッション2:アジアにおける財政 枠組みに関するラウンド・テーブル・ディスカッションこのセッションでは、ポストコロナ時代を見据えた財政再建や財政フレームワークの再強化に向けた取組みについて、日本およびマレーシアの政策担当者から紹介され、議論が行われました。セッション3:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた資金調達ニーズこのセッションでは、新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ侵攻によるエネルギー・食料の価格高騰上田淳二氏(財務総合政策研究所総務研究部長)からは、コロナショック下における日本の財政運営について、補正予算の編成によって必要な措置をとるための支出が行われたこと、ポストコロナの課題に対応するため「新しい資本主義」が提唱されていること等が紹介されました。また、コロナショックのような大きな経済的ショックに直面した国は、短期的にはアウトプットギャップを縮減することで経済の持続的な落込みを避けようとする一方、中長期の財政の持続可能性を維持する必要があるため、そのトレード・オフを意識して意思決定を行う必要があるが、様々な不確実性が高い中では、その意思決定を行うことが難しくなることが指摘されました。Md Farishzan Ismail氏(マレーシア財務省財政経済局プリンシパル・アシスタント・ディレクター)より、同国の財政フレームワークを強化するための財政責任法(FRA)策定プロセスについての説明が行われました。FRA導入の目的は、適切な財政運営のために必要とされる様々な要素を明確化し、原理や原則、目的や責任主体を明確化し、組織的な仕組みを強化することにあり、現在、FRA法案の最終ドラフトの策定段階に到達しており、2022年9月または10月に国会に提出することを検討していることが説明されました。によって、各国における持続可能な開発目標(SDGs)の実現がより困難になっているとの認識の下で、(i)包摂的な成長(inclusive growth)を達成するための統合的なフレームワーク、(ii)国レベルでのSDGsの資金調達のための計画プロセスの強化と課題解決のための枠組み、(iii)開発資金調達戦略を評価するツール等について説明が行われました。Valerie Cerra氏(IMF財政局アシスタント・ディレクター)は、包摂的な成長(Inclusive Growth)について、発表者を含むIMF職員が執筆した書籍*3(2021年12月出版)の内容を説明しました。近年は、国々の間の不平等は縮小傾向にある一方で、それぞれの国の中での不平等が一層拡大していることが問題となっており、先進国や新興大国で一層その傾向が強く、インフォーマルセクターでの雇用、ジェンダー間のギャップ、金融システムへのアクセスなど、様々な問題について、適切な措置をとっていくことの必要性が説明されました。特に、東南アジア地域では、気候変動問題に対する耐性が非常に脆弱な国もあり、国際社会が協力して取り組む必要性が高いことが指摘されました。Thomas Beloe氏(UNDP Sustainable Finance Hub プログラム・チーフ)は、持続可能な開発のための資金調達の枠組みに関して、各国ごとの統合された資金調達フレームワーク(Integrated National Financing Framework;INFF)を設ける取り組みを説明しました。INFFでは、一国の中で行われている様々なSDGsを実現しようとするための投資計画と、SDGsの実現に向けた官民それぞれの資金調達計画とが連携していない状況を解消するために、様々な投資計画とそのための官民それぞれの資金調達計画を統合し、官民がそれらの垣根を越えて協働することを目指しており、すでに80か国以上の途上国でそのような取組みが進められていることが説明されました。IMF 54 ファイナンス 2022 Aug.

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