ファイナンス 2022年8月号 No.681
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画像提供:ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン(3)楽観力(1)UWCの加盟校として(2)世界で羽ばたくチェンジメーカーたち(3)悲観は気分に属するが、楽観は意志である最後に私の座右の銘であるフランス人アランの書いた「幸福論」の中にある「悲観は気分に属するが、楽観は意志である」という一節をご紹介させていただきます。日々悲観材料に囲まれているのが我々の現状かと思いますが、その目の前にある悲観材料に見えるも5.そして世界へ楽観力は私の性格なのではないか、と言う人もいるのですが、これも人や組織を培う力なのではないかと思うのです。私どものような小さな組織においても皆が私の背中を見て走ってくるのですから、トップが不安になったり、いろいろな困難に怯んでいると、周囲の人にもそれが伝わっていくのです。その時に必要となるのが、意志を持った楽観力だと思うのです。すなわち「時間がかかるかもしれないし、思ったように進んでいないかもしれないが、必ずできる術を探る」と周囲の人たちに伝えて、実践することなのです。意志を持った楽観力で何回かそういうことをやっていくと、自分だけでなくてチーム全体がそういう力を持ち始めるということを、これまでの経験を通じて教えてもらった気がしています。最後に、私たちがどうやって世界とつながり始めているかについてお話しいたします。私どもの高校は、先にも名前が出ましたユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)という非営利組織の日本で唯一かつ初めての加盟校です。このUWCは世界18の国々に加盟校を持つのですが、これが大きなポイントではなくて、世界約160の国々の国内委員会において3,000人から4,000人のボランティアが、その国で優秀で志ある若者をリクルーティングして選抜して派遣してくれることになっており、これがポイントになっております。日本ではユナイテッド・ワールド・カレッジ日本協会という経団連の組織が日本における国内委員会をになっており、脈々と日本人学生を海外に派遣しております。我々が加盟校になることで、軽井沢にいながらにして世界160カ国から生徒が推薦されてくるのです。このインフラの力は大きいと思います。もう一つUWCのポイントがあります。卒業生のためのDavis United World College Scholarsという大学進学奨学金です。我々の場合、高校に入るための奨学金はあります。でも大学に受かったら学費を払えますか? となった時に、払えない人が結構いるのです。それを問題視して下さった米国の篤志家の方が、米国の90を超える加盟大学に入れさえすれば、大学とその財団とで半々奨学金を出してくださる仕組みを用意してくださいました。この奨学金をいただいて、今卒業生の半分以上が米国の大学に進学しております。最後にどのような卒業生が出ているか、例をお示しいたします。ご覧いただいている女性はタジキスタンから来ました。タジキスタンでは特に地方において女子教育が進んでおらず、しかも彼女は少数民族なので、高等教育になかなかアクセスできないことから、彼女自身がタジキスタンに帰ってサマースクールを始めております。ゆくゆくは学校を作りたいと奔走しております。またシンガポールに拠点を置く宇宙ベンチャーであるAstroscaleという会社は高度な専門知識を必要とするので新卒は採用しないのですが、私どもの第1期卒業生がその門を熱心にたたき、まずはインターンから始めて、去年初めての新卒採用となりました。教育から宇宙まで分野は多岐にわたりますが、それぞれ自分の信じる道を恐れず進んでいっております。 42 ファイナンス 2022 Aug.

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