ファイナンス 2022年8月号 No.681
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令和4年度職員トップセミナー 画像提供:ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンファイナンス 2022 Aug. 41(2)東日本大震災・福島の原発事故を経て(1)共感力(2)感謝力サマースクールで弾みがついたので、2011年のひな祭りの頃までに10人分の1億円が集まりました。この10人の方々にもう10人ずつご紹介いただいて100名の名簿を作りました。皆さんご紹介された方なのでどんどんアポイントが取れていき、これはうまくいきそうだと思っていた矢先に、東日本大震災が起きました。70件近くあった約束が全部キャンセルとなりました。それに加えて福島での原発事故がありましたので、「日本で学校を作っても海外からは誰も来ないよ」と言う方が大勢いらっしゃいました。「2011年7月の2回目のサマースクールもやらない方がいい」という意見がほとんどでした。でも決行しました。持てるすべての情報を日本語、英語、仏語で開示して、「日本が安全だとは言いません。しかしこれが私たちが知りうるすべての事実です」と伝えましたところ、ほとんどキャンセルなく、生徒も先生も世界から集まって2回目のサマースクールが実施できたのです。国際的に発信できる力とかリーダーシップとかがかなりメディアでも取り上げられるようになっていたご時世でしたので、私どものサマースクールには、あの夏4台のテレビカメラが入り、8紙の新聞・雑誌の記者さんたちが来てくださって、私たちの活動が国内外に大きく報道されることになりました。それからおよそ1年で15億円の資金が集まり、2012年に行政の許認可が取れて校舎の建設に着工、2014年秋に日本で始めての秋入学の高等学校として開学いたしました。共感力というのは、原体験の力とでも言いましょうか、事業においては、マーケットシェアだとか、成長率とかいろいろなことを考えますよね。それも大事なことと思いますが、事業を起こすということはたくさんの困難が降ってくる、そうした中、腹の底からこの事業が必要かどうか、自分自身が突き動かされることがなければ、他人を突き動かすことはできないのです。腹の底からこれが必要だと思えたなら、それでもって周りの人も同じように共感して同じように使命感と意志をもってプロジェクトを一緒に率いてくれるのです。これの連鎖反応で本校は気付かないうちにムーブメントになっていたのではないかと思います。立ち上げ期の数年間で、仲間に感謝することの重要性も痛いほど思い知りました。2008年から2012年まで、許認可が下りるまでは、寄付には一切手を付けないと決めており、全員ボランティアでやっておりました。本業を持つ人が空いた時間に手伝ってくれるとか、子育て中のお母さんが日中にちょっと手伝ってくれるというボランティアの集団が数十人おりました。そうすると、本業が忙しいとか、子供が熱出した等々でやってくれるはずのことがなかなか進まないとか、いろいろなことが出てきます。私が10人いたらもっと早くできるのに・・、と思うことが正直ありました。でも、私は一人しかいないし、実力が10しかないとすればどんなに頑張っても11くらいまでしかできないのです。でも2人目、3人目の人が8でも5でも3でも力を貸してくれれば、総力は10よりも大きくなるのだから感謝しなければいけない、ということに途中で気が付きました。そこからは、あらゆるメンバーにありがとうという気持ちが湧いてきました。4.学校づくりで学んだ3つのこと学校づくりの経験を通じて私が学んだことを3つご紹介いたします。それは「共感力」「感謝力」「楽観力」です。

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