ファイナンス 2022年8月号 No.681
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令和4年度職員トップセミナー ファイナンス 2022 Aug. 39(3)「問いを立てる力」(4)「困難に挑む力」(5)日本の高等学校の資格あり(1)日本の高校を1年で中退(2)メキシコで貧困、教育格差を痛感2.なぜ創ったのか教育の場においては「問題解決能力」という言葉がよく使われますが、これは問題が既に存在していて、それをいかに早く上手く解くか、という能力だと思います。私たちはそもそも「解かれるべき問いは何か」を見つける力が、より大事になってきているのではないかと思っております。降ってくる問いをただ解くのではなく、そもそも何が解くべき問題なのかを自分から見極めていく。この能力がこれからの若い人たちにとって極めて大事になっていくのではないかと思っております。チェンジメーカー、変革を起こす人を育てることを標榜しております。どんな多様性の中で仕事ができて、あるいはどんなに良い問いを立てられたとしても、新しいことを成し遂げていく、新しい価値観を作り上げていくのは本当に困難な道のりです。ですので、困難な状況に置かれても怯まずに行動を起こすことが非常に大事なのではないかと思っております。ある程度リスクをとる、ある程度生徒が失敗してもいい、そういう学び舎でありたいと思っております。私どもの学校がなぜメディアに取り上げていただくようになったか、ということですが、それは私どもの学校が日本で初めての学校教育法第1条校に規定する高等学校の資格を持つインターナショナルスクールである、ということがポイントになるかと思います。日本国内の他のインターナショナルスクールの多くが各種学校という扱いで、塾などと同じ位置付けであります。今までのインターナショナルスクールは日本の教育の仕組みの外に存在していたと思うのですが、我々はあくまで日本の高等学校として運営していることが大きな特徴であり、それがまた困難にもつながることになっているのですが、そのことはまたあとでご説明できればと思います。それから国際バカロレア資格というものについて簡単にご説明いたします。もともとフランス発祥のもので、平たく言うなら、「国際大検」のようなものです。これを修了して試験である程度の点数が取れれば、日本をはじめとして世界75の国々の大学に入試または進学資格が得られるというものです。我々の卒業生はほとんどが国内外の名門校に進学していくという形ですが、それだけでなくて、大学に進学せず起業家になったり、ギャップイヤーをとることで、ボランティアや世界旅行など自分の情熱や興味をさらに深めることに時間をあてたり、と多様な選択を行っております。私は1970年代半ばに東京都下の多摩ニュータウンで一般家庭の一人娘として生まれました。小学校は地元の公立で、中学高校は国立大学の付属校に進学しました。高校の1学期で大きな転機がやってきました。1学期の期末試験で数学が100点満点中24点でした。赤点です。理科も赤点すれすれです。夏休みに先生に呼び出されました。先生から「あなた、理数系の勉強を頑張らないと大学に行けませんよ」と警告されました。ふつうなら理数系の克服に取り組むのでしょうが、私は「先生、私は文系科目はほぼ100点です。学級委員もやっています。バスケットボール部でも補欠ながらボール磨きはよくやっています。なぜ私の欠点から入るのですか?」という話から始まり、結局、高校1年で中退することになりました。そのような私に奨学金をくださって、カナダ留学に送ってくださったのが経団連さんであり、その中にあるユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)日本協会であったのです。この奨学金がなければカナダへの留学はできませんでした。期せずして自分が創設した学校がまた数十年を経てユナイテッド・ワールド・カレッジの加盟校となり、運命を感じています。カナダ留学の時にも大きな転機が訪れます。私は受験英語は得意でしたが、話したり、聞いたりすることが全くできなかったので、カナダで全然英語がわからないという日が続きました。私の親友がメキシコ人で、彼女も英語ができずに私と同じくらい苦労していたのですが、高2、高3の夏休みに彼女が自分の家に

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