ファイナンス 2022年8月号 No.681
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20192018201720162015201420132012201120102009国日本商業宇宙打ち上げ法(1984年)陸域リモートセンシング政策法(1992年)米国リモートセンシング宇宙システム法(2005年)カナダフランス宇宙活動に関する法律(2008年)リモートセンシング政令(2009年)(図表4)宇宙ベンチャー育成のための支援パッケージ(一部抜粋)2020(図表6)衛星打ち上げ数の割合(2015−2020年)20192018201720152014(図表2)世界各国の航空宇宙工業 生産(売上)高の推移(図表7)宇宙産業の市場規模予測(世界)(兆円)140120100806040200(出所)株式会社日本政策投資銀行「日本における宇宙産業の競争力強化」、一般社団法人日本航空宇宙工業会「航空宇宙産業データベース令和3年8月」、株式会社野村総合・これまでの宇宙開発は国の機関が主導して進められてきたが、民間主導の宇宙開発へシフトしようとする動きが活発になっている。そのため、諸外国では民需が拡大し、アメリカやフランスを中心に航空宇宙工業生産(売上)高が増大しているが、日本では官需が9割であり、生産(売上)高も横ばいの状態が続いている(図表1,2)。・諸外国では、民間企業の参入を促すため、早い段階から法制度の整備が進められてきた(図表3)。これにより2000年ごろから米国を中心にベンチャー企業が台頭し、ロケットの打ち上げや小型の人工衛星の開発・運用等、人工衛星のデータ解析に至るまで、さまざまなビジネスが行われている。・一方、日本では、2017年に宇宙活動法や「衛星リモセン法」が施行され、その翌年に「宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージ」が発表されたが(図表4)、ベンチャー企業等の新規参入者の数は依然として少ない。・ロケットの再利用や3Dプリンタ技術の応用、自動化による人件費の削減等により、小型衛星の製造コストを含めた打ち上げ費用が減少したことから、小型衛星の打ち上げ数は増加している(図表5)。打ち上げ数が増えたことで、小型衛星による観測写真などの民需が本格化し、多くのプレイヤーが参加するようになっている。・世界の衛星打ち上げ数の7割以上を占める米国では、投資家の支援のもと起業家による宇宙事業参入が活発であり、政府需要から民間市場へ販路を拡大している(図表6)。2021年には8社もの宇宙ベンチャーが上場を果たすなどベンチャー企業の台頭が著しい。・技術の進展による打ち上げ費用の低下は、宇宙ビジネスへの参入障壁を下げ、既存事業の伸長や新たな産業の誕生に繋がり、2040年代には宇宙産業の市場規模は約120.2兆円に達すると予測されている(図表7)。そのうち、インターネットと衛星ブロードバンドが売上の5割弱のウェイトを占めるようになると見込まれている(図表8)。(図表5)小型衛星(300kg以下)の打ち上げ推移(機)1,0005003302010その他輸出6%民間2%2%民間38%官需41%軍需19%英国5%ロシア5%中国13%研究所「宇宙ビジネスが支える法制度」、内閣府「宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージ」43118161142129201320162012292011その他(兆円)米国3530252015105020081%フランスカナダ日本官需91%日本3%米国74%1,184314306380120.236.920162040(図表3)宇宙産業に関する法整備の状況リモートセンシング関連の法律(図表8)宇宙産業における売上割合の変化(世界)(%)100.090.080.070.060.050.040.030.020.010.00.0商業宇宙活動に関する法律(法律の施行年)宇宙活動法(2017年)投資家等とベンチャー企業のマッチングを円滑化するためのプラットフォームを発足人材交流を促進するとともに、JAXAと民間企業とのパートナーシップ型技術開発・実証を行う政府衛星データのオープン・フリー化のためのプラットフォーム構築、データ利用拡大のための実証事業を拡大-13.028.924.833.32016インターネット地上設備政府(法律の施行年)衛星リモセン法(2017年)4.911.117.218.69.048.1%39.12040衛星ブロードバンドその他(出所)一般社団法人 日本航空宇宙工業会「令和2年度政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備・データ利用促進事業費 調査報告書」、NewsPicksBrandDesign「【なぜ】2021年、コンサルが人工衛星を打ち上げる」、MorganStanley「Space:InvestmentImplicationsoftheFinalFrontire」「TheSpaceEconomy’sNextGiantLeap」衛星テレビ・スタートアップ段階に対する民間資金供給の円滑化・宇宙ベンチャーとJAXA等との人材交流を含めた技術協力・衛星データのオープン&フリー化の推進と利用拡大のための実証拡充(図表1)宇宙機器産業の需要タイプ別売上高構成(左:米国、右:日本)宇宙産業の経済規模世界の宇宙産業と宇宙ベンチャー大臣官房総合政策課 調査員 楠原 雅人/河野 愛本稿では、日本の宇宙産業における現状と課題、発展に必要な施策について考察する。コラム 経済トレンド98 32 ファイナンス 2022 Aug.日本の宇宙産業の発展に向けて

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