ファイナンス 2022年8月号 No.681
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◆開会挨拶鈴木俊一 内閣府特命担当大臣(金融)から、世界に先駆けて日本政府がトランジションファイナンスの重要性を訴えてきたことや、日本政府・金融庁の取組みについて紹介があった。また、トランジションファイナンスに関しては、こうした政府の取組みに留まらず、民間主導の動きも活発であり、気候変動という課題の解決のために、本シンポジウムに集まった官民の関係者が国境を越えて協力をすることが大事であるといった旨のメッセージがあった。◆基調対談カーニー氏と、水野弘道 革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使に米国・ロサンゼルスにて対談を行っていただいた。GFANZの作業、とりわけ本シンポジウムのテーマである、脱炭素へのトランジションが難しいセクターにおけるパスウェイの検討や、金融機関のトランジション計画に関する作業について紹介があった。また、昨今のエネルギー価格の高騰によって、化石燃料依存からの脱却を更に進める必要が生じていること、新興国支援・脱炭素に向けた技術革新(イノベーション)支援に果たす日本の役割への期待が聞かれた。◆ パネルディスカッション1 「カーボンニュートラルへの挑戦と課題」ディスカッションを始めるにあたり、シンガポール金融管理局(MAS)のダリアン・マクベイン チーフ・サステナビリティ・オフィサーから、アジアにおける脱炭素にむけた挑戦と機会について、基調講演としてお話があった。葛飾北斎の絵も引用し、気候変動が海面の気温上昇や生物多様性損失に与える影響について触れながら、ネットゼロ達成のために、アジア地域に必要な投資額や投資機会の紹介があった。続くディスカッションでは、世界及び日本国内におけるセクター別パスウェイの策定状況、その背景となる国内外のエネルギー事情、トランジションファイナンスの重要性について議論が行われた。トランジションを達成するための研究開発(R&D)の必要性が指摘されたほか、将来の技術面での不確実性がある中で、トランジションの信頼性を金融界としてどのように評価するかについても議論が及び、「投資家としては研究開発や設備投資にどのように資金配分をしているかを理解する必要があり、投資家による監視の目は 26 ファイナンス 2022 Aug.

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