ファイナンス 2022年8月号 No.681
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[6]. 服部孝洋(2021b)「リスク・フリー・レート(RFR)入門−TONA,TORF,OISを中心に−」『ファイナンス』12月号、14−24.[7]. 服部孝洋(2022)「店頭(OTC)デリバティブ規制入門−清算集中義務と中央清算機関(CCP)について−」『ファイナンス』7月号、20−31.制 <訂正版>」大和総研[4]. 服部孝洋(2017)「ドル調達コストの高まりとカバー付き金[5]. 服部孝洋(2021a)「グリッド・ポイント・センシティビティ入門―日本国債およびバリュー・アット・リスクの観点で―」ファイナンス3月号、80−88.[9]. 吉藤茂(2020)「図説 金融規制の潮流と銀行ERM―続・金6おわりに本稿ではOTCデリバティブ規制について取り上げました。次回は国債市場における非価格競争入札を取り上げることを予定しています。*31) CEMの与信相当額は、「再構築コスト」と「アドオン(ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャーに相当する部分)」の合計として定義されており、「再構築コスト」は計算基準日の時価評価額です。アドオン(ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャーに相当する部分)は想定元本×掛け目で計算されます(ここでの記述は吉藤(2020)のBOX12を参照しており、詳細は同書を参照してください)。SA-CCRでは証拠金の取り扱いが改善されていますが、これは注33を参照ください。*32) グレゴリー(2018)ではCEMの問題点として4点指摘しており、その他にはアドオンに関する問題点が指摘されています。詳細は同書のp.246〜*33) SA-CCRと呼ばれる手法では、与信相当額を「乗数(1.4)×(再構築コスト+ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャーのアドオン)」としています。そのうえで、再構築コストについてはマージン・アグリーメントの有無(変動証拠金授受の有無)により分かれます。マージン・アグリーメントがある場合、再構築コストはmax(デリバティブの時価合計−正味の取得担保額、変動証拠金のマージンコールとならない最大値、0)であり、証拠金の取り扱いが精緻化されています(ここでの説明は吉藤(2020)のBOX12を参照としています)。ここでは再構築コストのみを紹介しますが、将来の潜在的なエクスポージャー(ポテンシャル・フィーチャー・エクスポージャー)の算出方法についても担保が考慮されるような仕組みになっています(紙面の関係上割愛しますが、詳細は吉藤(2020)やBCBSのドキュメントなどを参照してください)。*34) グレゴリー(2018)では、SA-CCRの導入の目的として、「一つ目は、相対の店頭デリバティブに対し、簡単だがリスク感応的な規制資本計算の手法を提供することである。二点目は、中央清算機関に対する資本規制に向けて、同様によりリスク感応的な計算の土台を提供することである」(p.247)としています。247を参照してください。参考文献[1]. 斎藤祐一(2017)「金融規制の複合的影響を考慮したXVA」金融研究 第36巻第2号[2]. 鈴木利光(2016)「非清算店頭デリバティブ取引の証拠金規[3]. 富安弘毅(2014)「カウンターパーティリスクマネジメント(第2版)」きんざい利平価」『ファイナンス』10月号、56−63.[8]. 三菱東京UFJ銀行(2014)「デリバティブ取引のすべて〜変貌する市場への対応〜」きんざい融工学とリスクマネジメント」きんざい[10]. ジョン・グレゴリー(2018)「xVAチャレンジ―デリバティブ評価調整の実際」きんざい[11]. ジョン・ハル(2016)「フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕―デリバティブ取引とリスク管理の総体系」きんざい[12]. Andersen, L., Pykhtin, M.(2018)「Margin in Derivatives Trading」Risk Books証拠金規制入門便な取り扱いがなされています*31。CEMは簡便性という観点では有益ですが、これまで述べてきた当初証拠金の影響等を考慮していないなどの問題点を有しているといえます。例えば、グレゴリー(2018)ではCEMについてネッティングの便益の認識が単純化されている点や担保の取り扱いが単純化されている等の問題点を指摘しています*32。そこでバーゼルIIIではCEMに代わる手法が提案されています。例えば、標準的手法(SA-CCR)では、相対ネッティングがある場合、様々な証拠金の特徴を考慮したうえで与信相当額が算出される仕組みになっています*33。グレゴリー(2018)ではSA-CCR導入の目的として、OTCデリバティブ取引に対して、簡便性を維持しながら、実際のリスクに即した規制資本の計算手法を提供することや、中央清算機関に対する資本規制に向けての土台作りをすることが指摘されています*34。ちなみに、SA-CCRについては当初、2017年に適用開始が予定されていましたが、世界的に導入が遅れていました。もっとも、国際統一基準行および内部格付手法採用行等に対して我が国では2023年3月に、CEMからSA-CCRなどの手法へ移行される予定です。SA-CCRなどデリバティブ取引に係る信用リスクアセットの取り扱いについてはバーゼル規制の中でも複雑な点であるため、詳細は今後取り上げることを予定しています。 22 ファイナンス 2022 Aug.

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