ファイナンス 2022年8月号 No.681
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4アフリカ開発銀行(AfDB) 5終わりに新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動、ロシアのウクライナ侵略等により、国際社会が深刻な危機に直面する中で、主要な加盟国の代表が集まり、国際社会としての団結を示すことが極めて重要であるところ、一連のRDBsの年次総会は、国際社会の課題を議論し、強いメッセージを発信する場として、その重要性を改めて示す機会となった。現下の危機を乗り越え、強靭かつ持続可能な復興を促進するに当たり、今後もRDBsが果たす役割に期待したい。 地域開発金融機関(RDBs)の年次総会について ファイナンス 2022 Aug. 11第57回年次総会・アフリカ開発基金(AfDF) 第48回年次総会(5月23〜27日)年次総会では、ロシアのウクライナ侵略による影響等について議論が行われ、総務会合(プレナリーセッション)ではウクライナのマルチェンコ財務大臣が出席して発言した。日本は、ロシアのウクライナ侵略について、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす、明白な国際法違反であることを指摘し、厳しく非難した。そのうえで、EBRD総務会が迅速にロシア及びベラルーシによるEBRD財源の利用停止を決定したことを歓迎するとともに、国際社会がウクライナ及び周辺国に対する支援に緊急に取り組む必要性を強調しつつ、日本として、EBRDのウクライナ向け支援を後押しするため、27.5百万ドルの技術支援用資金をウクライナ支援向けに移転することを表明した。こうした議論を踏まえ、議長総括では、(1)EBRDは組織として、ロシアによる攻撃を非難し、又、ロシアに対して軍を撤収するとともに、EBRD設立協定の原則(民主主義・法の支配・市場経済等)に従うことを要請すること、(2)ロシア及びベラルーシによるEBRD財源の利用停止に係る迅速な決定と、モスクワ及びミンスクにある現地事務所の閉鎖を歓迎すること等が言及された。また、日本は、総務演説において、将来的にEBRDの支援対象地域のサブサハラ・イラクへの拡大について議論をすることは問題ないとしつつ、現状では、EBRDはウクライナ及びその周辺国への支援を最優先すべきであり、今後のウクライナについての情勢や支援ニーズを十分に見極められるようになった段階で、具体的な拡大についての判断を行うべきと指摘した。更に、今般、EBRD東京事務所が新たな拠点にオフィスを構えるとともに、新しい人員・機能を加えて、その体制が強化されたことに言及しつつ、東京事務所が一層重要な役割を果たすことへの期待を示した。AfDB第57回年次総会及びAfDF第48回年次総会は、本年5月23日~27日にガーナのアクラにおいて対面形式で開催され、日本からは、神田財務官が臨時総務代理として出席した。年次総会では、新型コロナウイルスや気候変動、債務、更にはロシアのウクライナ侵略により、アフリカ諸国が直面している複合的な危機への対応について議論が行われた。G7等が連携してロシアのウクライナ侵略を厳しく非難する中で、コミュニケにおいても、(新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく、)ロシアのウクライナ侵略により深刻化している課題に対する取組の重要性が明記された。また、日本は、総務演説において、アフリカ諸国が直面する複合的な危機を乗り越え、持続可能で包摂的な成長を実現するためには、(1)食糧安全保障・栄養を確保する持続可能な農業、(2)実効的なトランジションと適応対策、(3)保健分野の支援の強化、(4)債務の持続可能性の回復と透明性の確保が必要不可欠であることを指摘した。そのうえで、日本としてAfDBの取組を支援するため、日本の二国間の信託基金である開発政策・人材育成信託基金(PHRDG)やアフリカ民間セクター向け支援基金(FAPA)を通じて、新たに総額約20万ドルを貢献することを表明しつつ、本年8月に開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に向けて、アフリカ自身が主導する持続可能な発展をAfDBグループと共に一層後押ししていくことを強調した。

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