ファイナンス 2022年8月号 No.681
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1概要国際開発金融機関(MDBs)のうち、特定の地域における開発を支援する地域開発金融機関(RDBs)であるアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)グループ、欧州復興開発銀行(EBRD)及びアフリカ開発銀行(AfDB)グループについては、例年、春頃にそれぞれ年次総会を開催している。*13欧州復興開発銀行(EBRD) *1) 本稿において意見の表明に当たる部分は、筆者個人の見解であり、財務省や日本政府の意見を代表するものではない。*2) IDB事務局や議長国等、一部の出席者は、物理的に開催地で会議に出席。*3) 物理的な出席が困難な一部の加盟国はオンラインで会議に出席。*4) ADBの年次総会については、本年5月にスリランカのコロンボでの物理的な開催を予定していたが、スリランカ国内における新型コロナウイルスの感染状況等を踏まえ、5月にバーチャル形式で、規模を縮小した総務会(ADBの財務諸表や純益処分に関する審議のみ)を行った上で、本年9月26〜30日にフィリピンのマニラにあるADB本部で通常の年次総会で行うことが決定された。昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、全てのRDBsの年次総会がバーチャル形式での開催となった。本年は、IDBグループの年次総会については、新型コロナウイルスの感染状況等も踏まえ、3月にバーチャル形式*2で開催された一方、EBRDとAfDBグループの年次総会については、5月に加盟国等が物理的に出席する対面形式*3で開催された。*4これらの年次総会は、各地域の開発課題等について、加盟国等が一堂に会して議論を行う重要な会議であるところ、開催順に沿って、概要を紹介したい。IDB第62回年次総会及びIIC第36回年次総会は、当初、本年3月にウルグアイのプンタ・デル・エステにおいて、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響を踏まえ、バーチャル形式で開催されることとなり、日本からは、緒方副財務官が臨時総務代理として出席した。年次総会では、主にIDBグループの新しい価値提前国際局開発機関課課長補佐 影山 昇*12米州開発銀行(IDB) 第62回年次総会・米州投資公社(IIC) 第36回年次総会(3月28日)案(Value proposition)の実現に向け、IDB・IICのビジネスモデル等に係る更なる分析を求める総務決議案等について議論が行われた。日本は、総務決議案について、民間セクターの果たす役割が益々大きくなる中で、IDBグループの業務においても民間セクター業務の更なる主流化に向けてグループ間のシナジーを強化する重要性を指摘し、IICにおける理事会構成や資金拠出方法の柔軟化等を含むガバナンスの見直しや多数国間投資基金(MIF)による革新的な業務遂行の必要性を強調した。また、日本は、総務演説の中で、ウクライナ情勢等のリスクがもたらす不確実性が中南米・カリブ(LAC)地域の実体経済に及ぼす影響を注視していく必要性を指摘するとともに、(1)新型コロナウイルスの感染拡大による影響を世界で最も受けた地域の一つであり、かつ、2030年までに高齢化が最も速いスピードで進む地域になると予測されるLAC地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進や、(2)各国の実情を踏まえた温室効果ガスの排出抑制や適応・強靭化等の気候変動への対応、(3)サイバーセキュリティ等にも配慮したデジタル化の推進の重要性を強調した。第31回年次総会(5月10日〜11日)EBRD第31回年次総会は、本年5月10日~11日にモロッコのマラケシュにおいて対面形式で開催され、日本からは、大家財務副大臣が臨時総務代理として出席した。 10 ファイナンス 2022 Aug.地域開発金融機関(RDBs)の 年次総会について

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