ファイナンス 2022年7月号 No.680
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ファイナンス 2022 Jul. 3 酒類は、酒税が課される物品であり、安定した税収が見込まれることから、財政上、重要な役割を果たしている。酒税は、明治以降に地租とともに政府の大きな財源となり、一時は地租を抜き国税収入の中で首位となったこともあったが、その後は、所得税・法人税等の直接税のウエイトが高まり、令和2年度においては、酒税が国税収入に占める割合は1.7%となっている。しかし、酒税は、年によって大幅な増減がない安定した税収を確保できる税目であり、国家財政に大きく貢献している。その中で酒類事業者が消費者へ酒税を円滑に転嫁し、酒税を確実に徴収できるよう、酒類の製造及び販売業については免許制度が採用されている。国税庁は、酒類業の所管官庁として、免許事務を取扱い、事業者からの相談や申請等に対応している。また、人口の減少、生活様式の多様化といった環境の変化を踏まえつつ、酒税の保全と酒類業の健全な発達を図るため、施策を行っている。更に酒類は、「百薬の長」と言われているなど、その国の食文化ともかかわりが深く、伝統的な嗜好品の一つといえる。ただし、アルコール飲料であるため、致酔性、習慣性を有するなど、社会的に配慮を要する物品でもあり、酒類の適正な販売管理を確保する必要がある。国税庁は、酒類事業者と連携し20歳未満の者の飲酒防止の啓発活動、アルコールの健康障害対策等への対応にも取り組んでいる。加えて最近は、資源リサイクルに関する社会的な要請も高まっているため、酒類容器のリサイクル等の取組も行っている。一方で酒類の国内出荷数量は、平成11年度をピークとして減少してきているが、近年では、商品の差別化、高付加価値化、海外展開等に取り組む事業者も少なくない。また、酒類は地方創生やクールジャパン等の観点からも重要なコンテンツであり、こうした新たな観点からの展開も広がっている。また、日本産酒類への国際的な評価の高まりから、輸出も拡大している。国税庁は、酒類業の更なる競争力強化や輸出促進を図るため、関係省庁・機関等と連携して、国内外における認知度向上のための情報発信、海外における販路開拓支援、国際交渉等を通じた輸出環境整備に積極的に取り組むなど、国内向け施策と輸出促進施策を両輪に酒類業の振興に努めている。このうち、日本産酒類の輸出促進に係る取り組みについては、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」(令和4年6月7日閣議決定)等累次の閣議決定において、輸出拡大等の方針が示されている。また、政府全体としては、「農林水産物・食品の輸出額を、2025年までに2兆円、2030年までに5兆円とすることを目指す」とされており、目標の達成に向けて、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和2年12月15日農林水産業・地域の活力創造本部決定)において、重点27品目及びターゲット国ごとの輸出額目標等が定められた。酒類については、清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛の3品目が重点品目とされたことを受け、国税庁ではこれらの品目及びターゲット国ごとに定めた戦略を着実に推進していく予定。酒税は安定した税収を確保できる 国家財政に大きく貢献する税目国税庁の任務高付加価値化、海外展開等により 酒類事業者の新たな取組も内国税の適正かつ公平な賦課及び 徴収の実現と酒類業の健全な発達

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