ファイナンス 2022年7月号 No.680
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講師演題2. 東京オリ・パラのスポーツディレ3.研究・教育活動との両立私はスポーツをしながらアカデミックなバックグラウンドと両立させてきました。それは、怪我をしたら明日にでも引退しなければならないというリスクがアスリートには常にあるため、アスリートだけでやっていくのはよくないという思いがあったからです。私の恩師でもある父が大学の先生をしていたということも理由のひとつです。クター 56 ファイナンス 2022 Jul.令和4年4月15日(金)開催スポーツ庁というと、オリンピックやパラリンピックに関する施策が注目されますが、それだけではなく、子どもの体力向上や生涯スポーツ社会の実現にも取り組んでいます。近年では新型コロナウイルス感染症の影響で、外出自粛に伴う運動機会の減少やストレスの増加、そしてテレワークの増加による運動不足など社会変化に伴う様々な問題があります。こうした問題に対処していくためにも運動やスポーツが求められていますし、運動やスポーツで体を健康な状態に保つことによって、医療費の抑制効果も期待できます。アスリートがやっていることだけをスポーツとして捉えるのではなく、生涯スポーツとしてスポーツを捉え、計画的に施策として国が取り組むことが大切だと思います。国民の心と体をどういうふうに健全に、健康にしていくのか、そうしたムーブメントが大切だと考えています。1.運動・スポーツが求められる理由私は2020年10月1日に水泳の金メダリストである鈴木大地前長官の後を継いでスポーツ庁の長官に就任しました。就任会見で述べたとおり、感動していただけるスポーツ界、健全でフェアなスポーツ界を目指して政策に取り組んでいます。スポーツ庁長官に就任する前、私は6年半にわたって東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のスポーツディレクターを務めました。民間企業、国、東京都をはじめとする様々な地方自治体、そういった方々と一緒に仕事をすることは大変素晴らしい経験でした。無観客開催となり残念ではありましたが、コロナ禍で大変な時期にもかかわらず、おかげさまで無事、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を終えることができました。2014年には東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構サイエンスセンター長に就任し、アスリートを中心に怪我や疾病予防、術後の早期回復のための運動療法に取り組んできました。スポーツサイエンティストとメディカルが一体となってアスリートをサポートする、こうした連携が今後ますます重要になってくると思います。令和4年度職員 トップセミナー室伏 広治 氏(スポーツ庁長官 アテネ五輪ハンマー投げ金メダリスト)スポーツ環境の向上に向けて

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