ファイナンス 2022年7月号 No.680
58/90

5 強靭性・持続可能性トラスト(RST)*7) うち5億SDRは、PRGTの管理運営費用等の一般勘定への支払を一時的に停止することにより確保。バーチャルとなりましたが、公式理事会、非公式理事会含め、全部で500回以上の理事会がバーチャルで開催され、加盟国への融資や、パンデミック対応のためのポリシーの見直し等、多数の案件が承認されました。コラムパンデミック後のIMFの勤務形態IMFは、スタッフに感染者が発生したことなどを受け、2020年3月中旬から完全リモートワークに移行し、その後翌2021年5月末まで、物理的な出勤が不可欠なスタッフ以外は原則リモートワークとする体制が続きました。理事会も2021年6月末まで完全(Capacity Development)の設立 54 ファイナンス 2022 Jul. 4 特別引出権(SDR)の配分2021年8月、パンデミックによる世界的経済危機において、国際的な流動性を確保するため、IMF史上最大となる6,500億米ドル相当の特別引出権(SDR)の配分が承認され、うち約2,750億米ドルが新興市場国・発展途上国に配分されました。これらの配分額は、各国において準備資産の積み上げや、パンデミック対応のための社会支出等に活用されています。また、全加盟国に配分されたSDRを、脆弱国支援に有効に活用するため、対外収支が良好な加盟国が、自主的に自国のSDRを部分的に振り分けるSDRチャネリングも進められており、日本を含む複数の加盟国より、先に述べたPRGTの資金基盤の強化のためのSDRチャネリングを通じた貢献があったほか、本年4限を、一般勘定と同水準の、年間145%(2021年12月末までは一般勘定と同様245%)、累積435%に引き上げること、(2)より所得水準の低い国が、一定の要件を満たした場合に認められる、(1)のアクセス上限を超えた例外的なアクセスの上限を撤廃すること、などが承認されました。また、PRGTの資金基盤強化については、低所得国の資金ニーズに適切に対応するために必要な融資能力を確保するため、4.で述べるSDRチャネリング等を通じ、融資原資126億ドルSDR、利子補給金28億SDR*7を目標とするファンドレイジングが開始されました。本年3月時点で、日本を含む複数国より、総額融資原資約73億SDR、利子補給金5億SDRの貢献がありましたが、特に利子補給金については大きく目標額から乖離している状況にあり、IMFは引き続き経済的な強固な加盟国とその貢献に向けた議論を行っているところです。月に新たに設立された強靭性・持続可能性トラストへのチャネリングに向けて各加盟国との間で議論が行われています。本年4月、低所得国と脆弱な中所得国を対象に、気候変動やパンデミックなどのマクロ経済的リスクを伴う長期の構造的課題の解決を後押しするため、強靭性・持続可能性トラスト(RST)の設立が承認されました。RSTは、一般勘定とPRGTに次ぐIMFの融資スキームの第3の柱として、長期的な低コスト融資を提供し、適格国の長期的な国際収支安定性の強化を支援することを目的としており、本年秋のオペレーション開始を目指し現在準備業務が進められているところです。能力開発は、IMFの3つの中心的な組織的役割の1つとして、サーベイランス(加盟国の経済政策や金融政策のモニタリング)、融資と共に、重要な役割を果たしています。財務当局、歳入当局、中央銀行等の政府の経済関係当局の能力強化は、経済の安定、包括的な成長、雇用の創出のための効果的な政策を実施していく上で不可欠であり、IMFは50年以上にわたり、加盟国当局の能力強化に取り組んできています。特に低所得国においては、当局の能力強化が不可欠であり、IMFの能力開発関連の予算のうち、約5割が低所得国向けに活用されています。なお、日本は最大のパートナーとして、1991年よりIMFの能力開発に資 6 能力開発

元のページ  ../index.html#58

このブックを見る