ファイナンス 2022年7月号 No.680
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*5) RFIはRegular windowとLarge Natural Disaster(LND)window 、RCFはRegular window、Exogenous Shock(ES)window、LND windowで構成されているが、この時アクセス上限が引き上げられたのは、RFIのRegular window、RCFのES windowのみ。大規模自然災害発生時に活用可能なLND window(RFI、RCF)については、2021年6月に年間・累積アクセス上限がそれぞれ50%ずつ引き上げられ、130%、183.3%とされた(その後同年12月に、年間アクセス上限は元の水準である80%に引き下げ)。*6) 一般勘定の年間アクセス上限の引き上げ期間は、複数回にわたる延長の後、2021年12月末をもって終了し、現在のアクセス上限は、パンデミック前の水準と同等の145%。PRGTのアクセス上限は、2021年3月に、(3)で述べるPRGT融資制度見直しが理事会で承認されるまでの暫定的な措置として、年間アクセス上限245%(2022年1月より145%)、累積アクセス上限435%に引き上げられ、その後、同年7月に開催された理事会において、次回レビュー(2024-25年を予定)までの引き上げが承認された。(出典:IMF「2022 REVIEW OF ADEQUACY OF POVERTY REDUCTION AND GROWTH TRUST FINANCES」)ファイナンス 2022 Jul. 53(参考2)PRGTを通じた融資実績(2008‐21年)(単位:SDR billion) (2) 緊急融資枠の拡大、年間アクセス上限の一時的引き上げ(3) PRGT融資制度見直しPRGT共に、年間及び累積のアクセス上限が設けられています。パンデミック発生後、特に新興国や途上国において、感染拡大対策や経済対策等の実施により、喫緊の資金ニーズが高まっていることを受け、2020年4月に、コンディショナリティを伴わない緊急融資スキームである、RFI(一般勘定)、RCF(PRGT)について、年間アクセス上限が50%から100%に、累積アクセス上限が100%から150%に、それぞれ6ヶ月限定で引き上げられました*5。その後、複数回にわたり、上限の引き上げ期間が延長されましたが、緊急融資の年間アクセス上限の引き上げは2021年12月末で終了し、現在の年間アクセス上限は、RFI、RCF共に、クオータ比50%と設定されています。一方で累積アクセス上限については、2021年12月に18ヶ月間の延長が承認され、2023年6月末までは150%のアクセス上限が維持されることになりました。また、2020年7月には、一般勘定及びPRGTの年間アクセス上限が、145%から245%、100%から150%にそれぞれ引き上げられました*6。これらのアクセス上限の引き上げにより、IMFはパンデミック発生直後の加盟国の資金ニーズを速やかに支援することができ、2020年と2021年上半期に、PRGT適格国69ヶ国のうち53ヶ国に対し、約140億ドルのPRGTを通じた無金利の融資が実施され、その大半は緊急融資スキームであるRCFが占めていました。(2)で述べたとおり、パンデミック発生直後の低所得国の喫緊の資金ニーズに対応するため、初期対応として多くの低所得国に対し緊急融資が実施されましたが、低所得国が抱える構造的な債務脆弱性や対外不均衡を解消し、強靭な経済回復・経済成長を実現していくためには、中長期的に構造改革に取り組んでいくことが不可欠です。一方で、パンデミック前からの融資残高やパンデミック後の緊急融資により、既にアクセス額を上限近くまで活用しており、譲許的なPRGTによる融資がほとんど活用できない状況となっている低所得国も多くあったため、年間・累積アクセス上限の引き上げを中心に、PRGTの制度改革にかかる議論を早急に進めていく必要がありました。また、PRGTの融資は、一般勘定による融資とは異なり、加盟国の出資により保有している自己資金は用いず、別途貸付原資を市場金利(SDR金利)で加盟国から調達したうえで、これを市場金利より低い金利で低所得国に貸し出しを行っており、この調達金利と貸出金利との差額分については、過去の金の売却益やドナー国からのグラント貢献により得られた資金を原資とした投資収益により充当される(=利子補給)される、“self-sustaining”な独立したファイナンス構造として設計されています。パンデミック発生直後の2020年4月に、融資の急増に対応するため、取り急ぎの対応として融資原資のファンドレイジングが開始されましたが、低所得国の急増する資金ニーズに対応していくためには、大幅な資金不足が見込まれる利子補給金への対応を含め、より中長期的な観点から資金基盤の強化を検討する必要がありました。こうした問題意識を背景に、理事会で、1年近くにわたり慎重な議論が行われ、2021年7月に、(1)次回レビュー(2024-25年を予定)までの間、PRGTの年間・累積アクセス上

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