ファイナンス 2022年7月号 No.680
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*2) 世界保健機関(WHO)のガイダンスに従う。*3) 半年ごとに、その時点のCCRTの残高を踏まえて、理事会でディスバースの可否が判断される。*4) 2020年2月時点で、69ヶ国がPRGT適格国として認定(2年ごとに見直し)。資金源制度SBA (Stand-By Arrangement)EFF (Extended Fund Facility)RFI (Rapid Financing Instrument)FCL (Flexible Credit Line)PLL (Precautionary and Liquidity Line)SCF (Standby Credit Facility)ECF (Extended Credit Facility)RCF (Rapid Credit Facility)一般勘定PRGT目的顕在化した、見込まれる、 または潜在的な国際収支上のニーズ長期化する国際収支上のニーズ /中期的な支援顕在化し、かつ喫緊のニーズ顕在化した、見込まれる、 または潜在的な国際収支上のニーズ顕在化した、見込まれる、 または潜在的な国際収支上のニーズ顕在化した、見込まれる、 または潜在的な国際収支上のニーズ長期化する国際収支上のニーズ /中期的な支援顕在化し、かつ喫緊のニーズ期間最大3年、ただし通常12-18ヶ月あり4年以下一括買入れ1~2年6ヶ月、1年、2年のいずれか1~2年3~4年一括支払いコンディショナリティありなし(ただし事前措置を行うことはある)事前(資格基準)、2年間の取極めの場合は年次審査事前(資格基準)と事後ありありなし(ただしPrior Actionを設定することはある)(参考1)IMFの融資制度(引用:IMFファクトシート) 3 緊急融資枠の拡大、貧困削減・成長トラスト(PRGT)融資制度の見直し 52 ファイナンス 2022 Jul.(1)IMFの融資制度の概要救済は、エボラ流行という一部の地域における感染症流行を念頭に、当該国において人命に関わる感染症が複数地域で発生し、その感染拡大により著しい経済的打撃が既に確認されている場合にのみ、債務救済を行う制度となっていました。しかしながら、COVID-19パンデミックのような全世界的な感染症発生時には、ある国において、その時点ではそれほど感染症が拡大しておらず、経済的影響もまだそれほど見られない場合であっても、今後他の国と同様に感染症が拡大していく蓋然性が高く、早期の感染拡大防止策や経済対策の実施が必要となります。この観点から、2020年3月末に、CCRTの適用基準の拡大が理事会で承認され、理事会が当該感染症を「公衆衛生災害」であると認定した場合には*2、当該「公衆衛生災害」による国際収支上のニーズが発生していること、当局が同ニーズに対処するため適切なマクロ経済政策を実施していることを条件に、すべてのCCRT適格国が最大2年間にわたり債務救済が受けられるよう制度が変更され、債務救済額についても、最大クオータ対比20%から、24ヶ月間に返済期限を迎える債務全額に変更されました*3。また同時に、「公衆衛生災害」として理事会で認定されたCOVID-19パンデミックによる経済的影響を受けているCCRT適格国の流動性確保のため、2年間にわたる債務救済を実施するとともに、今後想定される新たな災害発生に備えるため、ファンドレイジングが開始され、日本を含む18カ国及びEUより、総額で6億SDRを超えるグラント貢献がありました。これらのグラント貢献等により、2年間で31ヶ国に対し総額約6億9,000万SDRの債務救済が行われ、CCRT適格国における流動性資金の確保に大きく貢献しました。パンデミック発生後の緊急融資枠の拡大や、貧困削減・成長トラスト(PRGT)融資制度の見直しについて述べる前に、IMFの融資制度について簡単にまとめたいと思います。IMFの融資は、加盟国の国際収支上の困難を解決し、強固かつ持続可能な経済成長を支援するために行われ、すべての加盟国が利用可能な一般資金勘定を通じた融資と、低所得国*4のみが利用可能なPRGTを通じた譲許的な融資があり、異なる国際収支上のニーズに応じた様々なスキームがあります(参考1参照)。通常、IMFの融資は、一般勘定、PRGT共に、事前に当局とIMFとの間で合意した経済政策プログラムに基づき、特定の政策を実施することを条件(=コンディショナリティ)に融資が実行されます。一方で、災害や紛争発生、コモディティ価格の変動等により、喫緊のニーズが発生した場合には、事前や事後のコンディショナリティを原則伴わずに、緊急融資を実施するスキームもあります(一般勘定、PRGT)。その他、既に強固な政策を実施している加盟国に対し、国際収支上の危機が高まった際に速やかな資金実施を行えるよう、事前に融資枠を設定する制度もあります(一般勘定のみ)。なお、IMFのリソースを保護するため、一般勘定、

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