ファイナンス 2022年7月号 No.680
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ファイナンス 2022 Jul. 47図表6:世界各国におけるCBDCの実施状況(出典:Atlantic Council) *17) Central Bank Digital Currency Tracker,Atlantic Council(https://www.atlanticcouncil.org/cbdctracker/)*18) 『中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み』日本銀行決済機構局、2022年4月13日*19) 前掲・日本銀行決済機構局(2022)*20) Gabriel Soderberg(in collaboration with Marianne Bechara, Wouter Bossu, Natacha Che, Sonja Davidovic, John Kiff, Inutu Lukonga, Tommaso Mancini-Griffoli, Tao Sun & Akihiro Yoshinaga), Fintech Notes:Behind the Scenes of Central Bank Digital Currency, Emerging Trends, Insights, and Policy Lessons, IMF, February 2022*21) 『中央銀行デジタル通貨:デジタル通貨の躍進と通貨の未来』KPMGあずさ監査法人、2021年2月他方で、現状セキュリティの側に圧倒的に不利な非対称性を、更なるテクノロジーの力で、逆にドラスティックに転換し得る可能性がある。それは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の普及である。CBDCは、暗号資産(仮想資産及びステーブルコイン)の広まりを追い掛ける形で、ここ数年、急速に存在感を増してきた。2022年月現在、世界80か国においてCBDCの発行が何らかの形で俎上に上っており、この内、バハマ等のカリブ海諸国をはじめとした9か国では既に流通開始済み、中国・ロシア等15か国においてパイロット実施中、そして、日米を含む56か国が調査・開発段階にある(図表6)*17。我が国に関して言えば、現時点でCBDCを発行する計画はないものの、日本銀行において、CBDCに関する技術的な実現可能性を検証するための実証実験を段階的・計画的に実施するとともに、これと並行して、様々な観点からの制度設計面の検討を進めている*18。なお、これまで登場した暗号資産は、ブロックチェーン技術を中核とした技術的仕様に、基本的にはタイアップしたものであるが、CBDCには中央銀行が電子的形態で発行する法定通貨、という緩やかな定義があるのみであって、その制度設計には様々なものがあり得る。分類の軸も、一本ではない。まず、技術的側面から、銀行の口座振替類似の形態を取るものと、トークンの形態を取るものに大別される*19。また、オペレーションの態様から、民間金融機関が関与せず中銀が一元的に管理する形態、民間金融機関が仲介機能を果たす形態、また、民間金融機関が発行した「通貨」を中央銀行の資産で裏付ける形態、の3つに分ける方法がある*20。更に、CBDCが使用される場面に着目し、中央銀行・市中銀行間で用いられるホールセール型と、個人や企業が日々の決裁に用いることができる、リテール型に分類することもある*21。上記80か国においても、これらの仕様が並行して実施又は調査・開発されている。地下資金対策から見たCBDC

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