ファイナンス 2022年7月号 No.680
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地銀A(間接清算参加者)クライアント・クリアリング証券会社を通じて清算証券会社A(直接清算参加者)クライアント・クリアリング証券会社を通じて清算中央清算機関証券会社B(直接清算参加者)生保A(間接清算参加者)図表10 クライアント・クリアリングのイメージ *32) 中央清算機関は仮に清算参加者がデフォルトした場合に、どのようにその損失を補填するかについてあらかじめ定めています。例えば、JSCCについては「まずデフォルターズペイということで、破綻清算参加者の負担(証拠金等)により補償することとしており、その後にサバイバーズペイということで、破綻清算参加者以外の清算参加者の負担(清算基金等)により補償することを基本としていますが、清算機関としてのリスク管理を適切に行うためのインセンティブを保つため、破綻清算参加者以外の清算参加者の負担に先立ち、JSCCの負担により補償することとしています」としています。詳細は下記を参照してください。https://www.jpx.co.jp/jscc/risk/default-waterfall.htmlBOX 1 中央清算機関向けエクスポージャーに対する資本賦課バーゼル規制の考え方は服部(2020)で説明しましたが、バーゼル規制では、リスク・アセットに対して、一定程度、自己資本で資金調達をすることが求められています。バーゼル3では、中央清算機関向けのエクスポー 30 ファイナンス 2022 Jul.4.5 クライアント・クリアリング中央清算されないデリバティブにおいて考慮している期間が「5日間」から「10日間」に延びていることから、クローズアウトするまで2倍の時間を要すると想定していると解釈できます。実際、中央清算機関では、仮に清算に参加する金融機関が破綻した場合に、どういう順序で処理していくかが具体的に決まっており、クローズアウトまでの時間が短いことが制度的にも裏付けられています。JSCCについては、まずは破綻した金融機関が差し出していた証拠金を用い、それでも足らない場合は中央清算機関の参加者が負担するという手続きになります(その手続きは細かく定められていますが、詳細はJSCCのサイトを参照してください*32)。グレゴリー(2018)では当初証拠金を計算するうえで「マージンリスク期間は、当初証拠金の必要性を最も左右するものである」(p.159)としたうえで、中央清算機関の場合、「直接相対する市場よりも素早くポジションをクローズアウトすることが可能である。なぜなら、外部のいかなる干渉も受けることなく清算参加者のデフォルトを宣言し、迅速かつ有効なデフォルト処理手続きの発動に動けるからである。こうした理由から、概して中央清算機関では当初証拠金の計算に5日間という前提が用いられる」(p.320)と指摘しています(もっとも、中央清算機関でクリアリングする場合、前述の清算基金への拠出が求められる点に注意が必要です)。OTCデリバティブの清算集中義務については前述のとおり、基本的には前年度の想定元本合計が3,000億円を超える金融機関に義務が課されています。もっとも、比較的小規模の金融機関にとって、直接中央清算することは現実的ではありません。そのため、大手の金融機関を通じて間接的に中央清算機関でクリアリングを行っています。このように間接的に中央清算機関でクリアリングすることをクライアント・クリアリングといいます。図表10がそのイメージです。例えば、地銀Aが金利スワップを結んでいる場合、証券会社Aを通じて中央清算機関で清算するというイメージです。このように地銀Aは証券会社Aの下にぶら下がり、証券会社AがJSCCなどでクリアリングすることになります。この場合、地銀Aに対して「間接清算参加者」、証券会社Aに対して「直接清算参加者」という表現を使うこともあります。なお、このように間接的にクリアリングに参加した場合、前述のクローズアウトに時間がかかりえることから、JSCCの金利スワップのクリアリングについては、前述の5日間ではなく、7日間の期待ショートフォールで当初証拠金を計算することになっています。

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