ファイナンス 2022年7月号 No.680
27/90

0 図表3 中央清算機関により清算される金利デリバティブの取引量(%)10080604020141615*8) ここではISDAによる「Key Trends in the Size and Composition of OTC Derivatives Markets」を参照しています。詳細はISDAのウェブサイトを参照してください。  値(直近は 20 年 12 月)。(出所)日本銀行(2021)「店頭デリバティブ取引データ等の整備と活用」19171820(年度)(注)新規取引に占める清算集中取引の割合(月次・金額)の後方 12か月移動平均中央清算なしファイナンス 2022 Jul. 23図表4 デリバティブ市場全体の分類上場デリバティブ店頭(OTC)デリバティブ規制入門デリバティブOTCデリバティブ中央清算あり3.2  中央清算機関でクリアリングされないOTCデリバティブデリバティブの業界団体であるISDA(International Swaps and Derivatives Association)によれば、グローバルでみても、金利商品については6割以上のOTCデリバティブが中央清算機関でクリアリングされています*8。もっとも、注意すべき点は、現時点においても、デリバティブ取引のすべてが中央清算機関でクリアリングされているわけではないという点です。日本では金利スワップやCDS(Credit Default Swap)といった標準的なデリバティブはクリアリングがされていますが、中央清算機関でクリアリングされていないOTCデリバティブも少なくありません。図表4がデリバティブ市場と中央清算の関係を示していますが、上場デリバティブは原則、中央清算がなされていますが、OTCデリバティブについては中央清算がなされているデリバティブと、そうでないデリバティブが存在しています。読者に理解していただきたい点は、すべてのデリバティブ取引を中央清算機関で清算することは現実的ではないという点です。例えば、デリバティブの中には流動性が低いデリバティブであったり、標準化が難しいデリバティブも存在します。中央清算のためには標準化やシステム化などが必要であることを考えると、ほとんど取引がなされない商品やそもそも標準化に向かない取引の中央清算は現実的ではありません。例えば、我が国における為替スワップについてはOTC市場で活発に取引されているものの、標準化が難しいこと等の観点から、今でもクリアリングがされていません。また、金融機関は仕組商品などの組成のために、非標準的なデリバティブ(エキゾチック・デリバティブ)の取引をしていますが、これは標準化に向かないデリバティブ取引といえます。前述のとおり我が国においては、金利スワップとCDSのみがクリアリングされているため、それ以外のOTCデリバティブは、原則、中央清算されないデリバティブになります。このため、中央清算機関でクリアリングされないデリバティブについては証拠金規制と呼ばれる、より一層厳格な証拠金が求められる仕組みが導入されました(図表2の右下です)。証拠金規制については、2011年のカンヌ・サミットでその重要性が指摘され、我が国においては、バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision, BCBS)と証券監督者国際機関(International Organization of Securities Commissions, IOSCO)で合意された「中3.3  証拠金規制:中央清算機関でクリアリングされないOTCデリバティブ規制中央清算機関でクリアリングした場合、厳格な証拠金の制度が適用されます。したがって、中央清算機関でクリアリングされないデリバティブについて厳格な証拠金規制がない場合、いわば抜け道ができてしまいます。例えば、標準的なデリバティブから少しずれたデリバティブ契約を行えば、清算集中義務を回避することが可能になってしまうリスクもあり、その場合、金融機関が標準的ではないデリバティブを取引するようなインセンティブを与えてしまうという結果になりかねません。

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る