ファイナンス 2022年7月号 No.680
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(https://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/convention/g20/g20_20200415_01.pdf) *7) 日本の場合、対象となる債権を有する貸付等機関は、JICA、JBIC、NEXI、農林水産省の米売払代債権。日本政府が相手国と交換公文を締結した上で、•支払猶予期間中に、保健分野等への支出を増加させること。•借入に関する情報をIMF・世銀に開示すること。•支払猶予期間中、非譲許的な借入を原則として増加させないこと。•全ての公的な二国間債権者が参加。•民間債権者に対し、同等の条件で参加することを要請。•国際金融機関(IMF・世銀等)については、今後、国際金融機関自らが参加の可能性を模索。2DSSIの概要とその実施プロセスDSSIの概要は以下の通り(後掲図参照)*5。当初、2020年5月から同年12月末までの8か月間に支払期日が到来する債務支払を猶予し、コロナ禍での保健分野等への優先的な支出配分に貢献するとの合意であっ*4) パリクラブに参加していないG20の国は、アルゼンチン、中国、インド、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ。*5) 2020年4月15日G20財務大臣・中央銀行総裁会議声明のアネックス2に記載。 *6) 2020年10月に、2021年6月末までの半年間の延長に合意し、2021年4月には、更に2021年12月末までの期間延長に合意。関連するG20財務大臣・中央銀行総裁会議声明は以下を参照されたい。https://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/convention/g20/g20_201014.pdfhttps://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/convention/g20/g20_210407.pdf更に契約変更等の必要がある各機関は相手機関との間で手続きを行う。《対象国》世銀のIDA支援対象国(76か国)か、国連が定義する後発開発途上国(47か国)のどちらかに属する国が対象(要請ベース)。《支払猶予の条件》債務国が、IMFによる支援を要請していることに加え、以下の取組にコミットすることが必要。《対象債権者》《支払猶予期間》2020年5月~2021年12月末まで《対象債権》支払猶予期間(上記)中に支払期限が到来する元本及び利子。ファイナンス 2022 Jul. 17債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)と債務問題の今後の展望 声明を発出したことを契機に、同年4月15日、G20及びパリクラブはDSSIに合意した。連日連夜、G7やG20、パリクラブ等での交渉が集中的に行われ、舞台裏では、喧々諤々の議論があったが、IMF・世銀の共同声明から僅か3週間で、非パリクラブ国*4を初めて巻き込んだ画期的な債務の取組みとして、DSSIが結実した。なお、DSSI合意に向けて、フランスが果たした役割は決して小さくはない。同国の経済・財政省は、かれこれ60年以上も、議長・事務局としてパリクラブを率いる一方、G20でも債務問題を取り扱う作業部会の共同議長を務め、一人二役で双方の議論を取り仕切り、パリクラブ・G20間の橋渡しを行った。た。しかし、その後もコロナの影響が長引き、支払猶予の対象期間を二度延長し、DSSIはトータルで1年8か月の期間の取組みとなった*6。債務国がDSSIの恩恵を受けるには、各債権国と二国間で個別に交渉し、融資契約等の規定を修正し、これに合意する、という法的な手当てが必要となる*7。ここで、各債権国による猶予措置(例えば、返済スケジュールに関する規定等)がバラバラになることを避けるため、パリクラブ債権国の場合は、事務局を務めるフランスが共通の合意文書(覚書)を用意し、要請国と、債権を有する全てのパリクラブ債権国が、これに署名するプロセスを経ることとした。これにより、要請国と、各パリクラブ債権国は、原契約の修正等にあたり、この覚書の内容をモデルとして二国間交渉を進めることが可能となり、パリクラブ債権国内での具体的な措置の整合性を確保することができた。一方で、非パリクラブ債権国の場合は、パリクラブのような事務局機能を有する主体が存在しないため、モデル

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