ファイナンス 2022年6月号 No.679
99/106

ファイナンス 2022 Jun. 95淡路島位置図国庫帰属財産の範囲外壁の剥落近畿3.国庫帰属に至った経緯4.観音像等の解体撤去土地及び観音像等の各建物は、所有者の遺族が相続を放棄したことにより相続人が不存在の財産となった。相続人不存在となった場合、まず利害関係人等からの申立てに基づき、家庭裁判所(以下、「裁判所」という。)において相続財産管理人(以下、「管理人」という。)が選任され、管理人による相続人調査、清算等一定の手続きを経て、残余財産がある場合は国庫に帰属する。観音像については、その財産の規模や特殊性などから、関係者において長期に亘り協議が行われ、当局が管理人及び裁判所から相談を受けたのは、所有者が亡くなってから12年経過後の平成29年であった。しかし、これほど大規模かつ特殊な不動産が国庫に帰属する事案は全国的に例がなく、管理人や裁判所と累次に亘り調整を行い、現地調査による財産の確認や物件特定作業などを進めた。およそ2年の期間を要したが、清算手続きが完了し残余財産が確定したことにより、国庫帰属に至ったものである。観音像は、所有者の死亡後現在に至るまで維持・修繕が行われておらず、老朽化や台風等の影響により外壁が剥落するなど、近隣住民に被害を与えかねない非常に危険な状態であった。国庫帰属後は、当局が所有者として適切に管理する必要があることから、老朽化した観音像をはじめとする各建物をどのように管理するべきか、管理人及び裁判所との調整作業と並行して検討を続けてきた。その結果、近隣住民の不安を解消するためには、これらの危険な建物を早急に撤去するとの結論に至り、国庫帰属後速やかに解体撤去工事に着手するため、大手ゼネコンや解体事業者から幅広く意見を聴きつつ、適切な施工方法等の検討を進めるとともに予算措置に向けた対応も進めた。観音像が国庫に帰属した後、令和2年6月に山門と十重の塔の解体撤去工事に係る契約を行い、同年11月、無事に工事が終了した。続いて最も懸念される観音像の解体撤去については、巨大建物のため慎重に進める必要があったことに加え、騒音対策等を含め、近隣住民の安全確保を考慮し、令和3~4年度の2か年をかけ実施することとした。約2年に及ぶ観音像の解体には、近隣住民の理解や

元のページ  ../index.html#99

このブックを見る